UCLとELの収入差はいかほど?

2020年3月9日

3週間前にアップしたこちらの記事でUEFAチャンピオンズリーグ(以下UCLと略)の収入を試算しました。

今回はUEFAヨーロッパリーグ(以下ELと略)がいくら儲かるのか、そしてUCLじゃなくてELに回ってしまったクラブはどれくらい損をするのかを計算してみました!

※本記事は1ユーロ=120円で計算しております。
※参考https://www.uefa.com/insideuefa/stakeholders/clubs/news/newsid=2616265.html
※参考https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/uk/Documents/sports-business-group/deloitte-uk-deloitte-football-money-league-2019.pdf

ヨーロッパリーグの勝ち上がり方式

「普段はUCLしか見てなくて、ELの勝ち上がり方式が良く分からない!」という人に向けて、簡単にグループリーグから決勝への道のりを説明します。「知ってるよ!」という人は次の節までスキップしてください。

・グループリーグ(以下GLと略)
出場48チームを4チーム×12グループに割り振って、ホームアンドアウェーのリーグ戦を行います。各グループの上位2チームの計24チームが決勝トーナメントのラウンド32に進出します。

・ラウンド32
GLを突破してきた24チームに、UCL側のGLで3位敗退した8チームを加えた32チームで決勝トーナメントを開始します。試合形式はホームアンドアウェー方式です。

・ラウンド16~決勝
あとはUCLと同じです。ホームアンドアウェーの2戦方式で勝ち上がっていき、決勝のみ1発勝負で優勝チームを決めます。

UCLと比較するとELは決勝トーナメントの段数が1つ多いです。なので、終盤まで勝ち残る場合はUCLよりも負担が大きいかもしれません。

ヨーロッパリーグの収入構成

ELにおいて、クラブ側に発生する収入は以下の4つに分類されます。この分類自体はUCLと変わりありません。

①勝敗やステージ突破による賞金
②クラブの格による分配金
③広告貢献度による分配金
④チケット&物販収入(ホーム試合開催による収入)

①勝敗やステージ突破による賞金

その名の通り、試合の勝敗や各ステージへの到達によって得られる賞金。
※ステージによって金額が違うので、以下順番に説明

・GL到達賞金=3.5億円
本選GLに参加した48チームに平等配布される賞金

GLの各試合の1勝ボーナス7400万円
GLの各試合の1引分けボーナス2300万円

・ラウンド32到達(GL突破)ボーナス
⇒GL1位突破チーム=1.8億円
⇒GL2位突破チーム=1.2億円
UCLからの落ち武者チーム=6000万円(GL3位でELに回ったチーム)

ラウンド32進出までの成績によって支払われる賞金は以上です。

去年EL優勝したチェルシーは5勝1分けでGL1位突破だったので、ここまでで約9.3億円の賞金をGETしました。ナポリインテルなどUCL側のGLで3位となってELにやってきたチームは6000万円のみです(もちろんUCLのGL到達賞金やGL1勝ボーナスはそのまま貰えますよ!)。

そして、ここからは次のステージに上がるごとに賞金がでます。

・ベスト16到達ボーナス=1.3億円
・ベスト8到達ボーナス=1.8億円

・ベスト4到達ボーナス=2.9億円
・決勝到達ボーナス=5.4億円

最後に、優勝すると

・優勝ボーナス=4.8億円

優勝ボーナスだけはUCLと同額というのが謎ですね。格差の誤魔化しにすら見えます(邪推)

さて、去年優勝のチェルシーはこの5賞金も加えて、約25.5億円の賞金を得たことになります。プリシッチの移籍金の3割相当くらいですな。

②クラブの格による分配金

これは、当該クラブの直近10年のUCL,ELの成績によって分配される報酬。10年間の成績によって48チームがランキング化され、48位の金額を基準に1倍ずつ報酬が上がります。UCLからの落ち武者勢はUCL側で分配金を得ているため、EL側での分配はナシです。

・48位=850万円
・47位=1700万円(2倍)
・46位=2550万円(3倍)
(中略)
・1位=4.1億円(48倍)

優勝のチェルシーは3位だったので、46倍の約3.9億円を得ています。

※最新の順位はココで見れます。

③広告貢献度による分配金

ここはUCLと同じく詳細が分かりませんでした。全体で総額200億円に上るのは分かったんですが、各国の広告貢献度に応じて分配されるようで、実際にどのチームにいくら分配されたかはデータを見つけられませんでした。

④チケット&物販収入(ホーム試合開催による収入)

クラブによってチケット価格などが当然違うため、ここも本来はチームによってバラバラ。参考までにチェルシーの試合収入を17-18シーズンのデータから"荒く"概算したのが以下の通り。

・17-18シーズンのMatchDay収入(売上)は約101億円
・17-18シーズンのホーム開催試合数は30試合
※プレミア19試合、UCL本選4試合、FAカップ3試合、リーグカップ4試合

つまり、101億円を30試合で割ると、1試合あたり約3.4億円の売上。経費が50%程度とすると、1ホーム開催試合あたり約1.7億円の利益と想定されます。ELは決勝までにGL3試合と、ラウンド32,16,8,4でホーム開催がありますので、最大7試合分の収入が計上できるため、1.7億円×7試合=11.9億円となります。

UCLとELの如実な格差

では各項目の合算&UCLとの差額計算をしてみましょう!

チェルシーの推定EL利益額
①25.5億円
②3.9億円
③4.2億円(詳細分からないので単純平均)
④11.9億円
合計45.5億円

チェルシーで45.5億円というと、中心選手4人分くらいの年俸ってところでしょうか。今夏にアザールが抜けたので、5人分くらいにはなるかもしれません。5大国の中堅~上位クラブがEL終盤まで残るとこれくらいの収入になると思われます。

・(比較参考①)UCL優勝のリヴァプールの推定利益額
①89億円
②23億円
③11億円(単純平均)
④12億円
合計:約135億円

ELチェルシーとの差額:135億円ー45.5億円=89.5億円

・(比較参考②)UCLラウンド16敗退のドルトムントの推定利益額
①45億円
②32億円
③11億円(単純平均)
④4億円
合計:約92億円

ELチェルシーとの差額:92億円ー45.5億円=46.5億円

「oh……this is 格差社会」っていう金額差ですな。プレミアリーグの終盤戦において、ビッグ6が死ぬ気で4位以内を争う理由も分かります。4位でUCLに行けるか、5位でELになるかで優勝時の賞金が90億円近く変わるんですから血眼になって当然です。

また、チェルシーのようにELで最終版まで残れたとしても、UCLベスト16で散ったドルトムントの方が倍ほど儲けています。お金だけで純粋に考えた場合、5大国のリーグ優勝と準優勝の差より、UCLELかの出場権の差の方が大きいでしょうね。

まとめ

今回の検証ではUCLELの収入差額は約90~46億円と出ました。

また、今回の計算には算入していませんが、各クラブが個別契約しているスポンサーとの契約条項において、UCLELかで金額が変わるような条項が盛り込まれていると予想されます。そのため、実質的な差はもう少し大きくなるように思います。

この金額差ですから、ACミランが「UCL出れないとFFPが守れない!」ってなことになるのも理解できますねぇ。