意識高い系諸葛亮~1章5節~

キャラ紹介とか用語説明は長くなりそうなんで、設定置き場を別ページで作りました。ちょっと経済ノベル化してるので、詳しく理解したい人や興味のある人は見てね!

前回のあらすじ

徐庶が劉備3兄弟と共に劉表の元を訪れると、蔡瑁と鉢合わせてしまった。劉表の前で、劉備と蔡瑁はお互いを「曹魏カンパニーと裏で繋がっている」と罵り合う。しかし、蔡瑁の提示した証拠が徐庶によって否定されたことにより、蔡瑁は劉表の信頼を損ない、退出を命じられた。

徐庶曰く「こちらのスライドをご覧ください」

邪魔になる蔡瑁が退出したため、劉備はこれ幸いと買収対策の検討をしたいと劉表につたえ、徐庶にゴールデンパラシュートの説明をするように指示した。指示を受けた徐庶は、用意していた携帯型プロジェクターを使って壁面にパワポスライドを投影してプレゼンを始めた。

概略の説明が終わったところで、劉表が疑問を口にした。

「確かに、劉備君を代表取締役から解任するのに高額の費用が必要となれば、曹魏カンパニーの買収意欲は大きく削がれるだろう。だが、劉備君だけに利益があるように見えんかね。他の株主が納得してくれるようには……」

徐庶が笑顔で頷きながら答える。

「劉表社長、おっしゃる通りです。確かに、これだけでは劉備の立場が安泰となるだけで、他の株主の方にはメリットがありません。そこを打ち消すために、まず株式配当の大幅な増額は当然セットになります」

「ふむ。確かに、劉備君が経営の舵取りを始めてからKマート新野は好調だから、配当増額も可能だろうな」

「加えて、Kマート本社から新たに3人ほど取締役を迎えて、その方たちにもゴールデンパラシュートを設定します。現在こちらで想定しておりますのは、まず、蒯越・蒯良のご兄弟」

蒯越(かいえつ)はKマート本体の常務、蒯良(かいりょう)は専務である。2人とも劉表の側近であり、信頼も厚い。またKマート新野の株を2%程度ずつ保有している株主でもある。

「ふむ、あの2人をお目付け役として受け入れると?」

「その通りです。劉表社長が蒯兄弟に何らかの監視を任せようと、お飾りとして役員報酬を享受するように指示しようと、それは劉表社長がご随意になさってくだされば結構です。この部屋に盗聴器が無いことを祈りながらぶっちゃけますと、Kマート本社社員に対して報償として使える高給ポストを2枠用意すると捉えてください」

「なるほど、まずまず魅力的だな。残るもう1枠は?」

「劉表社長のご子息、劉琦(りゅうき)様です」

それを聞いた劉表が顔を上げて疑問の色を浮かべる。

劉表には子供が4人いる。その中で後継ぎと目されているのは長男の劉琦と、次男の劉琮(りゅうそう)の2人である。本来ならば長男の劉琦が後継ぎとなって当然なのだが事態はそう簡単ではない。

問題の原因は2人の母親が別人であることだ。劉琦の母である陳氏はすでに亡くなっており、現在の劉表の妻は劉琮の母である蔡氏(蔡瑁の姉)だけである。この蔡氏が弟の蔡瑁や一部の重臣達と結託して、自分の息子である劉琮を後継ぎにしようとそこかしこで政治工作をしているため、問題が複雑化しているのだ。

「劉琦かね。どういう意図があって……」

劉表が徐庶に真意を聞こうとした時だった。社長室のドアがバーンと乱暴に開かれ(本日2度目)、キャバ嬢と見まがうような格好の妖艶な熟女が香水の匂いを撒き散らしながら入ってきた。いわゆる美魔女という類の人種である。それを見て劉備がボヤくように言った。

「蔡のオバンか……」

入ってきたのは次男劉琮の母である蔡夫人だった。劉琦・劉琮の後継ぎ問題がややこしくなるもう1つの原因がこの蔡夫人の美魔女っぷりなのだ。いくら夫人が後継ぎ問題に口を挟んだところで、本来は劉表が毅然とそれを拒否すればそれで終わりのはずである。しかし、現実はそうなっていない。その理由は単純明快である。

「蔡たんどうしたの?」

65歳を迎えるという劉表が鼻の下をのばして「蔡たん」なんて呼んでいるのだ。この情景を見れば99%の人間は察するだろう。そう、後妻の蔡夫人に劉表が首ったけになっており、強硬な態度に出れないのである。

蔡夫人は乱入後、劉備達を睨み付けて威圧して黙らせつつ、劉表の横に座って、蔡瑁が酷い目にあって心配していたという話を始めた。おおかた、弟の蔡瑁から「泣き」が入ったのだろう。

「瑁ちゃんが信頼を失ったんじゃないかってショックうけててぇ~」

「気にするな。蔡瑁君も悪気が無いのは分かっている。今日は冷静になってもらいたくて帰ってもらっただけだよ」

「ホントにぃ~?瑁ちゃんああ見えて、根はいい子だからぁ~」

猫なで声で劉表に意見する蔡夫人を見て、劉備ら3人は如実に嫌悪感を顔に浮かべる。しかし、徐庶はその様子をにこやかに見ていた。「逆に好都合かもしれない」と思っていたからだ。

「で、藁売り3兄弟さんは何の用で来ているのかしら~?」

「あ?喧嘩売って……」

劉備が挑発に乗りかけるが、張飛が後ろから羽交い絞めにし、関羽が口を押さえつける。

それを見つつ、涼しい顔をして徐庶が代わりに答えた。

「いえ、本日は劉表社長や劉琦様、そして奥様や劉琮様にも実りのあるお話をお持ちして、ご提案させていただいているのです」

「あら、どんなお話ぃ?」

蔡夫人が食いついた。もはやここで退くのは得策ではない。徐庶は爆弾を落として勝負に持ち込むことを決断した。

「劉表社長の後継ぎ問題に、道筋をつけるご提案です」

「おい、そんな話とは聞いていな……」

さすがに劉表は焦った様子だが、それを遮ったのは蔡夫人である。

「あなた黙って。続けてくださいな」

語尾が伸びなくなり、値踏みするような目で徐庶を見つめている。どうやらこっちが本性なのだろう。

「ありがとうございます。それでは説明させていただきます。こちらのスライドをご覧ください」

徐庶は笑みを崩さず投影しているスライドを巻き戻し始めた。


徐庶は劉表に対して行ったゴールデンパラシュートに関する提案を圧縮して蔡夫人に再度話し、新取締役に蒯越・蒯良兄弟と、劉琦を迎えたいというところまでを説明した。

「ふうん。確か蒯さん達と、主人の賛成を得られれば押し切ることはできるわね。で、劉琦さんをなぜ取締役に?」

「ことは単純です。劉琦様の資質を明らかにするためです」

「どういうことかね?」

さすがに息子の資質となって不安に思ったのか、劉表が聞いた。

「劉表社長がお悩みなのは、長男の劉琦様と、重臣の方々や奥様からの指示を集める次男の劉琮様、このどちらが後継者として相応しいか。どちらが今後の荊州を担える人材か、判然としないからですよね?」

「……うむ。そうだ」

本当は蔡夫人に嫌われるのが怖くてヒヨっているだけなのだが、表向きとしては徐庶の言う通りである。

「しかし、どちらにその資質があるのか、あるいはどちらの方が優れているかなど、実際現場で働いてみないと分からない。ですよね?」

「うむ」

「では、試せばよいのです。劉琦様にKマート新野で実務に就く機会を設ければよい。Kマート本体は企業規模も、個々の店舗のサイズも大きく、劉琦様のような方を経営の一角に加えるのは難しいでしょう。しかし、Kマート新野であれば企業規模も店舗サイズも相対的に小さいですから、エリアマネージャーから経験を積むことが可能です」

先の見えない後継者問題について、後継者の能力を試す場を提供するということである。Kマート新野で劉琦が実績を上げ、活躍できたのであれば彼を後継者にすればよいし、ダメだったなら重臣達の推薦を受ける形で劉琮を後継者にすればよいのだ。

「しかし、劉琦にいきなりそんな……」

劉表は難色を示す。しかし、蔡夫人は乗り気である。

「いい話ね。残念ながら劉琦さんが思ったほど結果を残せなかった場合、そのままKマート新野のポジションにいて貰えばいいし」

蔡夫人の言う通り、劉琦が無能を晒した場合、彼をそのままKマート新野の取締役に留め置くことで後継者問題は押し切り易い形になる。「無能な劉琦様ですが、生きていくには十分の報酬があるポストを用意しました。解任される場合もゴールデンパラシュートで遊んで暮らせるお金が貰えます。なので文句を言わずに子会社で働いてください」という理屈に筋が通るのだ。

「でも、劉琦さんが予想外の実績を上げちゃうと、琮(劉琮)ちゃんはどうすれば良いのかしら?」

もはや蔡夫人の視界に劉表や劉備は入っていない。直接徐庶に目を向けて意見を求める。

「その場合は、劉琮様もKマート新野にて同じ立場で実戦を経験されればよいでしょう。劉琮様の方が売上を上げられるようでしたら、結果としては劉琮様を後継にすべしという声が大きくなるでしょう」

「なるほど。それなら平等ね。こんな平等な話を断るバカなんて居ないわよねぇ~」

そう言って蔡夫人は劉表を見た。

「そ、そうだね蔡たん……」

劉表は冷や汗をかきながらそれを肯定した。

確かに一見平等とは言える。しかし、本質は不平等きわまりない話だ。蔡家という荊州有数の名家が後援している劉琮と、親戚内で孤立傾向の劉琦が売上勝負などしても結果はハナから見えている。劉琮がKマート新野に来てエリアマネージャーをする流れになったならば、蔡家が一族総出で彼の管轄店舗で買い物をすれば事足りるからだ。


襄陽の居宅に待機していた諸葛亮のもとに、徐庶からLI〇Eメッセージが届いた。

徐庶「劉表氏、受諾する方向で調整するとのこと。劉備さんもなんやかんや言ってたが、概ね満足の模様」

諸葛亮「GJ。おつかれー」

諸葛亮「しかしあれだね」

諸葛亮「劉琦は病弱なのに、実務やらせるってダークサイドに落ちた提案だよね」

徐庶「え?何それファーストイヤーなんですが」

劉琦が病弱なのは親戚内では有名だった。しかし、表向きには隠されている話ゆえ、徐庶は知らなかったのだ。

諸葛亮「まぁ、本筋にはノーエフェクトだし」

徐庶「いやいや、俺が悪い人みたいじゃん」

諸葛亮「ま、そういうこともある。おやすみー」

徐庶「オイィィィ」

諸葛亮は詫びをいれようか誤魔化そうかと一瞬悩んだあと、面倒になってスマホの電源を落として横になった。

~続く~

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