意識高い系諸葛亮~1章4節~

キャラ紹介とか用語説明は長くなりそうなんで、設定置き場を別ページで作りました。ちょっと経済ノベル化してるので、詳しく理解したい人や興味のある人は見てね!

前回のあらすじ

劉備、蔡瑁、曹仁を利用したマッチポンプ作戦を進めていた諸葛亮だが、蔡瑁と曹仁が思わぬ面談を果たしたという情報から事態は急転。劉備は劉表社長への直訴を決意し、ちょうど営業に来ていた徐庶を連行する形で襄陽に向かった。

徐庶曰く「これCG加工されてますね」

Kマートの社長にして、グループのトップを務めていた劉表とはいかなる人物か。後に「三国志」という歴史歪曲ゴシップ小説を著すことになる陳寿(ちんじゅ)は劉表を以下のように評価している。

「基本的には有能だよ。頭は回る方だし、向学心もある。Kマートが拡大できたのはあいつの功績。ただ、寛容な人格者を演出しようと頑張ってるけど、実際は猜疑心バリバリ強いほうなんだよね。だから決断力がイマイチだし、冷徹になりきれない」

劉備の評価も、陳寿とほとんど同じであった。

「劉表ってジジイは、昔は敵か味方か微妙な立場のヤツを利用する度量があった。Kマートを分社化して、地元の資産家に子会社株をプレゼントして取り込んだり、荊州南部なんてエリア単位で経営権ごと与えたりと思い切ったことをしていたからな」

襄陽のKマート本社事務所の廊下を早歩きしながら、劉備は徐庶にそう伝えた。定時退社時間はとっくに過ぎており、社員の人影がほとんど見当たらない状態なので、こんなことを話していても咎められることは無いのだろう。

「だが、最近は耄碌したのか守りに入っちまって、何かにつけて疑心暗鬼する厄介野郎になっちまっている。だから、今日劉表を説得するには……」

徐庶が劉備の言葉を待たずに、あとをついで言った。

「こちらが味方だと思わせること、そして蔡瑁に対する疑心を煽ること。この2つですね」

「理解が早くて助かるねぇ。よし行くぞ!」

社長室のドアの前に立った劉備は、ノックもせずに勢いよくドアを開けて入っていく。

「社長邪魔するぞ。ちょっと話があるんだ」

ビジネスマナーもへったくれもない押し入り方である。就活面接でやったら一発アウトだろうと徐庶は感じた。しかし、驚くのはこれからであった。入室した劉備がいきなり走り出して、室内にいた男の胸倉を掴んだのだ。

「てめぇ蔡瑁!どのツラ下げて出てきやがった!?」

そう、蔡瑁がいたのだ。曹仁とのツーショットが流出してしまったため、劉表に要らぬ疑惑を持たれないように申し開きにきたのだろう。いきなりやってきた劉備に胸倉を掴まれた蔡瑁は、それを振り払おうと声をあげる。

「何をするこの裏切者!」

「裏切者はてめぇだろ!コネしかねぇスットコドッコイのクセに!」

社長室には劉表も在室している。しかし、事態の急変にポカーンと口を開けているだけだ。そして、ヒートアップした劉備は蔡瑁を殴ろうと腕を振り上げた。

「お止めくだされ!!」

その瞬間、関羽が進み出て劉備の腕を握って止めた。部屋が静まりかえり、関羽のイヤホンから漏れるシャカシャカ音だけが響く。数秒の間をおいて、劉表がなんとか絞り出すように言った。

「りゅ、劉備くん、キミの話も聞くから落ち着いてくれ」


劉表から促され、劉備と徐庶は応接用ソファに座った。ローテーブルを挟んで向かい側には劉表が座り、右側のいわゆるお誕生日席に蔡瑁が座った。体格の大きい関羽と張飛はスペースの関係上、劉備の背後に立っている。第3者がこの場面を目にしたならば、「地上げ屋が舎弟をつれて殴り込んで来た」というシーンにしか見えないだろうと徐庶は確信していた。

「おい、曹仁と何を話したんだ?」

喧嘩腰なスタンスは変えず、劉備が蔡瑁にたずねた。

「キミが来る前に社長には説明した。地元の会食で同席してしまっただけなんだ」

「馬鹿かテメェは。曹仁が居ると分かった段階で椅子蹴飛ばして退出すべきだろうがよ」

Kマートにとって、曹魏カンパニーは敵対企業である。そのため、劉備の言っていることは過激であるが、一理あると言える。

「確かに、そうしなかったのは私の失敗だろう。その点は認めよう」

そこに劉表が割って入った。

「それはもういい。蔡瑁、先ほど話しの続きをしてくれ」

「社長!劉備は曹魏カンパニーにKマート新野を売るつもりです!」

「テメェ!表出っ……」

劉備が立ち上がろうとするが、張飛と関羽が背後から押さえつけた。

「そこまでは聞いた。しかし証拠はあるのか?」

「劉備と曹仁が会食をしているのです!」

「それはお前も同じだろう。会っただけで敵に協力しているとなるのであれば、2人とも同罪だ」

「おっしゃる通り。ですが、これを見てください!」

蔡瑁がビジネスバッグからクリアファイルにいれた写真を取り出し、テーブルに置いた。

「劉備と曹仁の密会写真です」

劉表が写真を手にとって一瞥し、劉備に渡す。

「なんだよこの写真!俺は会っていねぇぞ!」

劉備が驚きの声をあげる。ただし、これとて「会った事実」を示すだけである。しかし、蔡瑁には1つの武器となる情報があった。

「この写真は曹仁のSNSにアップされていません。この写真は意図的に隠されていたのです。だから私は『密会』と言ったのです。公にできないことを相談したから隠したに違いありません!」

「何と……」

劉表が驚きの表情を見せる。劉備への猜疑心が強まっているのかもしれない。それを見て蔡瑁が畳みかけるように言った。

「今、劉備は『会っていない』と言いました。しかし見てくださいこの写真を。このデップリと突き出た下腹部を!劉備が荊州に来た頃はもっとスリムだったでしょう!間違いなく最近撮影された写真なんですよ!」

蔡瑁が勝ち誇ったような表情を浮かべる。劉表は劉備の手から写真を受け取って再度凝視する。

「劉備!いい加減白状し……」

蔡瑁が劉備に対する弾劾の声をあげようとする状況の中、劉表の持つ写真のぞき込んだ徐庶がポツリと言った。

「……あーこれ、CG加工されてますねぇ」

全員の視線が徐庶に集まる。

「あ、すいません申し遅れました。Kマート新野に経営コンサルタントとしてお邪魔している徐庶と申します」

そう言ってから劉表と蔡瑁にSHJ国家戦略研究所の名刺を渡しつつ、徐庶は続ける。

「えーと、どこが分かり易いかな……。ああ、ヒゲを見てください。この写真、劉備さんの頭髪に白髪が混じってきたトコまでは再現しているようですが、鼻ヒゲと顎ヒゲは真っ黒なんですよね。でも、今の劉備さんのヒゲは……」

劉備を除く全員が、写真と劉備の顔を見比べる。

「そうです。劉備さん、ヒゲにも結構白髪が混じっているんですよ。おおかた、写真をCG加工する時にヒゲを直し忘れたんでしょうね。あと、お腹を出したのはいいですが、ここまで腹が出ると太ももに影が映るハズです」

「さすが徐庶」と言いたいところであるが、当然ながら、彼は今この写真を見て、即座にCG加工を看破したのではない。この写真がCG加工されたものだと、あらかじめ知っていたのだ。

つまり、諸葛亮が蔡瑁に渡した写真自体、諸葛亮がCGで加工したウソの写真だったのである。曹仁のSNSから拝借した10年前の飲み会でのツーショット写真に、諸葛亮がわざと粗いCG加工を施して作ったものなのだ。

諸葛亮が偽造した写真なのだから、曹仁のSNSにアップされていないのも当然である。曹仁はこんな偽写真の存在など知りはしないのだから。

「蔡瑁さん、自分の疑いを有耶無耶にするために、劉備さんと曹仁の密会写真をデッチ上げるってのは少々やり過ぎじゃないですかね。劉備さんのことを嫌うのは個人の自由ですが、Kマート本体の取締役と言う立場を忘れては本末転倒です」

「そんな……、しかしこの写真は諸葛……」

黒幕となった人物を挙げようとして蔡瑁は思いとどまる。劉表も諸葛亮も蔡瑁も親戚である。そして、諸葛亮の許嫁の父は大資産家にして劉表の義兄である黄承彦である。親戚内のパワーバランスにおいても蔡瑁は不利なのだ。諸葛亮の名を出すのは余計に問題を悪化させかねない。

「どうしたのです?それとも誰かにそそのかされたんですか?」

徐庶が意地悪な質問をする。蔡瑁が名前を出すならば「親戚に悪評をなすりつける外道」という方向でレッテル貼りをすればよいし、名前を隠すのであれば怪しさが増すだけである。

言葉を失う蔡瑁。そして、そこに思わぬ追い打ちが入る。

「うっ……、ぐう……」

なんと、劉備が涙をこらえているのである。劉表が驚いて聞く。

「劉備くん、どうした?」

「ああ、失礼しました。昔馬に乗って営業に飛び回っていた頃は、このように腹が出るようなこともなく、太腿もシュッとしていましたが……。何も成せぬまま曹操に追われ、ただ荊州の地で安穏と太っていたことがショックなのです……。自分の無力さがふがいなく……、そして、このような貶めを受けることが悔しくて仕方ないのです」

これが後に故事成語として伝わる、『髀肉之嘆』の元となった場面である。

涙を流す劉備を見て、劉表は「感情の振れ幅がよく分からない変な奴だが、疑われてショックを受けてるのは間違いない」と劉備を信用したのだ。

劉表はソファにもたれかかるようにして言った。

「蔡瑁、今日は帰れ」

「そんな……」

すがるような眼差しで劉表を見る蔡瑁だが、劉表の判断は揺るがなかった。

「もう1度言う。今日は帰れ」

~続く~

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