意識高い系諸葛亮~1章3節~

キャラ紹介とか用語説明は長くなりそうなんで、設定置き場を別ページで作りました。ちょっと経済ノベル化してるので、詳しく理解したい人や興味のある人は見てね!

前回のあらすじ

CGデザイナーで意識高い系ニート諸葛亮は、自己顕示欲を満たすために劉備に取り入ることを決意。自分を高く売るために策動を始めた。諸葛亮が蔡瑁に、龐統が曹仁に工作を行い、徐庶によって劉備との接触を果たしたが、蔡瑁と曹仁が直接会談をしたことによって事態は急転する。劉備は、「この機に一気に叩く必要がある」と判断し、Kマート本社社長の劉表への直談判を決意した。

諸葛亮曰く「パワポ作らないと!」

「オラァッ!走れ走れ!」

劉備が馬の尻を叩いている。馬車に乗った徐庶が驚いたのは、御者席に座って馬を操るのが劉備本人だということだ。顧客に運転してもらうような状況になってソワソワする徐庶を見て、張飛が落ち着いた口調で言った。

「兄者は自分で運転しないと気が済まない方でして……、お気になさらないでください」

「ああ、お気遣いありがとうございます」

徐庶はそういって一息ついてから座席にもたれかけた。

「曹仁のクソみたいな習慣に感謝だな!おかげさんでつけ込むチャンスができた!」

ハイテンションになっている劉備が、車内の3人に向けて言った。

曹仁は飲み会で同席した人間と自撮りツーショットを撮り、SNSにアップすることを習慣にしている。とくに初対面の人間とは100%撮影してアップすることを自分に課しているのだ。(無論、同僚からは面倒がられているが)

今でこそ大企業重役の曹仁だが、元々は地元のヤンキー集団を率いるボスであった。「偉いヤツ&強いヤツと俺はマブダチ!」というアピールをして、マウントをとっていた頃の癖が抜けていないのだ。

そんなハイテンションになっている劉備を見つつ、徐庶は張飛にたずねた。

「緊急事態なのは分かりますが、どうして蔡瑁に直接注意をしに行かないのですか?」

「ええと、何というか……」

張飛の答えを待たず、御者席から劉備が大声で返事した。

「蔡瑁はバカだが、自分のポジションやカネを守ることに関しちゃ最低限の知能はある方だ。曹仁と会ったのは偶然で、仕事の話はしていないとトボけられたらどうにもなるめぇ。それならダメ元で劉表にチクって制止してもらう方が成功率はたけぇんだよ」

蔡瑁に逃げる余地を与えないという点において、劉備の言っていることは正しい。ただ、大ごとになってしまう点は気がかりである。疑惑が否定された場合、劉備の評判や社内政治力にダメージが及ぶ可能性もある。

「それに、ゴールデンパラシュートとか言うのを設定するなら、劉表に判断の暇を与えちゃダメだろ。今が一番アツいんだから、今説得して言質取っちまうのが手っ取り早いと思うぜ。時間が経って危機感も薄れちゃ話は進まねぇよ」

「確かに、おっしゃる通りですね」

実際問題、諸葛亮ら3人もそうなるように動いていた。蔡瑁と曹仁の密会を仲介し、交渉の証拠を確保して劉表に突き付け、一挙にゴールデンパラシュートの設定まで話を進める腹積もりであった。しかし、予想外に蔡瑁や曹仁の動きが速かった結果、それらの準備が整っていないタイミングで動かざるをえなくなったのだ。

「あとな、奴はコネ入社で取締役になったとは言え、Kマートに勤めて20年になるんだ。奴にとっちゃ俺なんぞ社長の血縁関係で入ってきた外様にすぎねぇよ。俺の言うことなんぞ聞くワケがねぇ」

「ぶっちゃけで教えて欲しいんですが、劉備さんは蔡瑁さんが嫌いなんですか?」

「大嫌いだね!この機に引きずり降ろせりゃ最高だぜ!」

なんとも分かり易いお方である。大嫌いだからこそ、今回の1件を大ごとにしてダメージを与えたいのだろう。

その時、徐庶は馬車に同乗していた関羽と目が合った。外出時はブルートゥースの耳掛け型イヤホンをMP3プレイヤーに接続して音楽を聴いている関羽だが、ちょうどプレイリストの曲の切れ目だったようだ。

「……貴殿は兄者を、劉備玄徳をどう思われますか?」

これまで、全く会話に入ってこなかった関羽が、真剣な眼差しで徐庶に尋ねた。

「えっ……、そうですね……」

今まで会話をしてきた張飛と違い、関羽にはどういう答えをすれば良いのか分からない。何か音楽的な言葉を使えばよいのだろうかと徐庶は混乱する。関羽はじっと徐庶の一挙手一投足を見つめている。

「……グルーヴィな人ですね」

「……」

関羽は無言で右手をスッと差し出し、徐庶に握手を求めた。どうやら表現が響いたようである。

「あ、どうも」

徐庶は胸をなでおろしつつ、右手を差し出して関羽と握手を交わした。関羽の手は熱く、大きかった。一流ミュージシャンのオーラ的な何かを感じた徐庶であった。


徐庶が劉備に連行される形で、劉表の元に向かっていると聞いた諸葛亮と龐統は、突貫工事でパワーポイントの資料を作っていた。ゴールデンパラシュートに関して最低限の情報は徐庶とも共有しているが、手ぶらで赴いては先方の不機嫌を誘発する可能性がある。説得の成功率を上げるためには、優れた資料が必要なのだ。

「亮、ここに挿絵を入れてくれ!」

「OK。龐ちゃんは懸念事項とまとめを3項目ずつ捻り出してくれ」

「3つでないとダメなのか?」

「パンピーの脳内メモリじゃ3つが限界だ。だから3つはマスト」

いつもの龐統ならここから2,3回は食い下がるのだが、今は時間が無い。腕を組んでウームと考えながら諸葛亮にたずねる。

「ゴールデンパラシュートを株主総会で設定するとして、その解除条件はどうすんだ?」

「正直言ってノープラン。後でブレストして何とかするつもりだった」

株主総会でゴールデンパラシュートを設定するには、その設定自体を解除する条件も考えておかねばならない。ゴールデンパラシュートはその対象者が任を解かれる際に発動するため、曹魏カンパニーの動きに関係ない状況下で劉備を解任しようとする際、邪魔になってしまう可能性があるのだ。

例えば、劉備が不正行為を働いたり大赤字を出したりしてしまい、Kマート本社が劉備を退任させようと考えた場合、ゴールデンパラシュートが邪魔で解任できなくなるといった事態が考えられる。

これに気付かないほど、Kマート本社の連中はボンクラではない。株主総会をチェックするIR担当者もいれば法務部もある。それゆえ、ゴールデンパラシュートを解除する条件、あるいは発動しない条件を準備しておかねばお話にならないのだ。

「赤字転落で解除ってのはどうだ?」

龐統が提案するが、諸葛亮は即断で否定する。

「ディスアグリー。曹魏カンパニーがKマート新野の店舗周辺住民にamanギフト券なんかをバラ撒くと、売上が激減して一瞬で赤字になる可能性がある」

解除条件の設定が難しいのは、曹魏カンパニーが主体的かつ容易に解除できる条件では意味がないということだ。赤字によって解除されるのであれば、曹魏カンパニーお得意の営業妨害によってKマート新野を赤字化すれば事足りてしまう。

「じゃあ、いっそ曹魏カンパニーによる買収時にしかパラシュートが発動しないと設定するのは?」

「それもディスアグリーだ。曹魏がペーパーカンパニーを使ったり、他の勢力を引き込んでそっちをフロントにしてきた場合に無力化される」

「株主の議決権ベースで3分の2(66.6%)以上の賛成をえるってのは?」

「ベクトルとしてはアグリーだが、インポッシブルだろうな。現在のKマート新野の株式保有率は劉備と本社分を合わせて35%だ。本社の決定権を持つのは劉表だから、3分の2を確保するためには劉備か劉表のどちらかの賛成が必須となる。その点では安心と言える。だが……」

諸葛亮の言葉を先読みして龐統が言った。

「劉表と劉備のコンビが崩れない限り、2人が拒否権を持つことになっちまうから、他の株主や重役連中によっぽどの便宜を図らないと反対される、か」

「イグザクトリー」

色々とアイデアを出すもののこれといった手が浮かばない。龐統は頭を抱える。

「八方ふさがりじゃねぇか。ゴールデンパラシュートの有効期限を設定するくらいしか思いつかないぞ。期限を決めるにしたって、2年くらいが限界だろう」

これは単純にゴールデンパラシュートが有効な期限を最初から定めておく方法である。例えば「ゴールデンパラシュートが有効なのは2年後の株主総会まで。それ以降も続ける場合はその株主総会で賛同を得るように」と決めておけば、2年後には無料で解任することが可能となる。「何か状況が変わっても、2年耐えればクビにできる」という希望をもたせることで株主の「まぁいいや」感を強め、総会決議を突破するのだ。

「『議決から2年経過』と『議決権ベースで3分の2以上』のどちらかが満たされた場合に解除可能、ってあたりがコンセンサスを得られるリミットラインだろうな」

諸葛亮としても、現状ではこれくらいの選択肢以外は持ちえないのだった。

~続く~

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