意識高い系諸葛亮~1章2節~

キャラ紹介とか用語説明は長くなりそうなんで、設定置き場を別ページで作りました。ちょっと経済ノベル化してるので、詳しく理解したい人や興味のある人は見てね!

前回のあらすじ

CGデザイナーで意識高い系ニート諸葛亮は、自己顕示欲を満たすために劉備に取り入ることを決意。自分を高く売るために策動を始めた。まず、曹魏カンパニーの買収先になりそうな『Kマート新野』の株を売るように蔡瑁にけしかる。同時に曹魏カンパニー側からの仕掛けを誘発するために、龐統が曹仁との接触を果たした。

徐庶曰く「ゴールデンパラシュートで防衛しましょう」

蔡瑁と曹仁に対する仕込みが終わったため、諸葛亮はこの辺りで劉備とも接触しておきたいと考え、徐庶に劉備への『営業』を指示した。徐庶は司馬徽の推薦状(司馬徽からいいねを貰ったコメントのスクショ×200枚)PDFをDMに添付して劉備に送り、アポイントをとって面会にこぎつけることができた。

面会場所と指示された劉備の事務所はKマート新野庁舎前店の2階にあった。徐庶がそこを尋ねると、劉備と、彼と義兄弟の契りを交わした関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)が在室していた。

差し出された名刺には次のように書かれていた。

『SHJ国家戦略研究所 シニアフェロー 徐庶(元直)』

名刺を一瞥し、最初に口を開いたのは張飛であった。

「名刺ありがとうございます。SHJ国家戦略研究所の徐庶さんですね」

「ええ、初めまして。徐庶と申します」

徐庶がそう言って軽く会釈をしたとき、応接用ソファにふんぞり返っていた劉備がぶっきらぼうに言った。

「聞いたことのねぇ研究所だな」

「兄者!失礼だろ!初対面なんだからもう少し礼儀ってものをだな……」

「おっと、失敬!」

劉備はよく言えば「裏表の無いタイプ」、悪く言えば「場をわきまえずにホンネが出てしまうタイプ」である。それに振り回されているのが張飛で、劉備の暴言を叱責する役割を担っている。

ただし、徐庶は違法仇討ちで手配されて、刑を食らっていた時期もある元ヤンである。この程度の『ブッコミ』に怒るようなヤワな人間ではないのだ。

「あはは、いえいえ仰る通りですね。立ち上げたばかりですからね」

張飛は徐庶の反応にホッとしつつも、話題を転換しようと試みる。

「SHJは何かの略なんですか?」

「ああ、しょか……」

由来を話そうとして、徐庶はいきなり口をつぐんだ。SHJは当然、諸葛亮、龐統、徐庶の3人の頭文字を表しているのだが、諸葛亮や龐統が別の場所で工作をしている以上、今名前を明かすのは得策ではない。そう考えた徐庶は、今思いついた出まかせを言わざるをえなかった。

「ええとですね……、我々が大事にしているSpeed(速さ)、Honest(実直)、Jingi(仁義)の頭文字です」

「カッコイイじゃん!」

なぜか劉備には受けたようである。この御仁は「仁義」とか「大義」という言葉が大好きだという噂だが、どうやら本当らしい。

「ありがとうございます!」

ムードが良くなってきたのを感じ取り、張飛はもう1つアイスブレイクをしようと話題を徐庶に向けた。そういった気配りのできるところが張飛の優れた点である。

「ところで、司馬徽先生から推薦されたので、正直もっと痩せた方が来ると思っていたんですが、徐庶さん結構筋肉質ですね。何かスポーツでも?」

「撃剣っていうマイナー競技をやっております。短剣を使った護身術みたいな」

「地味だなぁ。何が楽しいのそれ?」

「兄者!言葉選んで!」

「失敬!」

しかし、張飛の気遣いは空振りに終わったようである。劉備と一緒に対外交渉に出ると、毎回毎回こんな調子である。

徐庶はそんな様子を苦笑いしながら、一言も発さない関羽に目を向けた。

関羽「……」

関羽はヘッドホンを耳に当て、ロック音楽に聴き入っている。彼は一流のシンガーソングライターで、以前は曹魏カンパニーのレコード会社に所属していた。勿論メジャーデビューも果たしており、ミリオンダウンロードも達成している。

先方からの質問などが途切れた様子なので、徐庶は気を取り直して要件に入ることにした。

「……さて、本題に入らせてください。DMでも軽く触れましたが、まずお知らせしたいのは曹魏カンパニーが御社『Kマート新野』をTOBしようと企てていることです」

それを聞いた張飛はテーブルに前のめりになって問うた。

「えーと、疑って悪いんですが、それは本当なんですかね?」

「どこまで本格的に動くかというと、まだ確実とは言えません。しかし、荊州エリアの営業拡大を担当している曹仁が、御社の株主名簿を入手したところまでは確証があります。また、地場の小株主さんの一部とは既に接触もしています」

「マジかよ!やべーじゃん!」

と、劉備が頭を抱えながら反応した。

「Kマートさんの子会社は、株を細かく分けて地場の資産家や実業家に広く保有して貰うことが多いようなので、買収する側からすると『攻めやすい』と映るのかもしれませんね」

「元が糞他人にすぎねぇから、ニンジンぶら下げられちゃ忠義もへったくれもないと?」

「クソ??……、いや、まぁ概ねその通りです。子会社の自立性を高めて地域密着にしたのは良いのですが、その反面統制も効かなくなるということです」

劉備の言葉遣いは非常に汚いと言える。その単語のチョイスに驚くことも多い。ただし、物事の本質を見抜く力はあるように徐庶は感じた。いわゆる「要領をつかむのが上手い」人間でないかと思ったのだ。

「しかし、そうだとして何か対抗策はあるんですか?正直なところ、曹魏カンパニーが本気でTOBをかけてきたら、ひとたまりも無いですよ。なんたって資産額が桁違いですから」

「はぁ!?曹魏に株を売る奴等なんぞ、片っ端からぶっ殺してしまえばいいじゃん!敵を守る民間人なんてそれはもう敵だろ!」

「兄者!心の声を閉まって!今来客中でしょ!」

「スマン!」

皇帝の血縁者を自称する人間が、こんな汚い言葉遣いをするのはよろしくないのかもしれない。しかし、今の交渉においてはこの劉備の分かり易さが好都合である。

「ああ、それほど気にならない性質なのでお気になさらず……。むしろホンネが聞けてありがたいですし」

「いいねえ!話分かる人は好きよ」

「はぁ……」

徐庶が乱暴な物言いを許してくれることには安堵したが、即決でそれに甘える劉備を見て、張飛は無力感を覚えた。彼は溜息を1つついて、ふと関羽を見やった。こちらはこちらでいつも通り静かに座っている。

「……」


真面目に話を進められるのは自分しかいないと諦めた張飛はたずねた。

「で、なにか防衛策はあるのですか?」

それに対し、徐庶は即答した。

「あります。その名は『ゴールデンパラシュート』です」

聞きなれないフレーズを耳にした劉備が喜色を浮かべる。

「金曜ロー〇ショーの映画タイトルでありそうな名前だな!」

「確かに。コメディ青春モノでありそうですね。金ぴかパラシュートで惚れている女の家に向かってダイブみたいな」

「その場合、やっぱ女が住んでるのはタワマン最上階なのかな!?」

「いいですね。画面映えしそうですね!」

徐庶が劉備の物言いに適応した結果、「悪ノリする餓鬼が2人になった」と張飛には感じられた。

「きみたち、話を進めようという意欲はあるのかね?」

張飛の口調に少々の怒気が含まれたのを感じ取り、徐庶と劉備は口を併せて言った。

「すいません」

「はぁ……。で、具体的にはどのような策で?」

コホンと一呼吸おき、徐庶は右手の人差し指をたて、くるくると回しながら説明を始めた。

「みなさんがもし曹魏カンパニーの人間で、『Kマート新野』を買収できたとしましょう。その場合、現職の『Kマート新野』の重役陣はどう扱います?」

「そんなもん、クビだろ」

「そうなりますよね。では、経営陣をクビにする場合に、メチャクチャ高額な解除金が設定されていたらどうします?」

「金額による。利益でカバーできる額なら構わないからな」

劉備が連続で即答する。言葉遣いが乱暴なだけで、やはり頭はキレる方なのだ。

「そうですね。資料によると劉備さんが社長になってからの年間売上は70億銭くらいで、利益は14億という驚くべき数字ですから、解除金は100億くらいにしましょうか」

「俺が曹仁なら退却だぁな。さすがに赤字がデカすぎる」

「そうやって買収側の意欲を削ぐのがゴールデンパラシュートです。経営陣を崖から突き落とすかわりに金製のパラシュートを与える約束を仕込んでおくことで、『買収したあとでさらにカネがかかる』と思わせて買収にブレーキをかけるんです」

劉備は大きく目を見開いて頷いてから言った。

「それ採用!」

「ちょっと待って!そんなこっちに都合のいい話、ウチの一存じゃ決められませんよね」

しかし、常識人の張飛から待ったがかかった。

「その通りです。株主総会の決議が必要です」

「そもそも、本体の劉表社長以下、他の株主にとっても何のメリットもないじゃないですか。通るわけないですよ」

張飛の言う通り、現在の『Kマート新野』には劉備以外の取締役はいない。こんな状態で劉備にだけ高額な解除金など設定しても、株主にメリットは皆無である。よほど劉備が経営者として心酔されているのであれば、提案が通る可能性もあるが、そんな状況とはとても言えない。

「ええ。確かに」

「じゃあ、絵にかいた餅じゃないですか!」

ここで徐庶はニコっと笑みを浮かべた。用意してきたフレーズが使えると思ったのだ。

「ですから、本日私は『その餅を絵から取り出す方法』を売りに来たのです」

「いいじゃん!買った!」

「おい!金額聞いてからにしろクソ兄……」

その時、テーブルに置かれた関羽のスマホのバイブレーションが鳴った。関羽はスマホを手に取り、内容を一瞥した。

関羽「ム……、兄者!曹仁のトゥイートを見てくだされ!」

それを聞いて劉備も懐からスマホを取り出して確認する。

劉備「ああ?また飲み友達の自慢写メか?……って蔡瑁じゃねぇかこれ!」

徐庶「は?」

予想外の展開に徐庶は唖然とする。今日、劉備のTOB対策に関する興味をくすぐった上で、来週くらいに蔡瑁と曹仁を接触させて劉備の決心を促す予定だったのだ。

驚いている徐庶に対し、劉備がスマホ向けた。

「あ、確かに蔡瑁さんですねこれ。直で行っちゃったのかな」

「ちょく?」

「あいや、こっちの話です」

要らぬことを言ってしまい、張飛が引っかかった様子であったが徐庶は流してしまうことにした。

「おいおい、タイミング良すぎるだろ。なんかの仕込みこれ?」

「さすがにそこまで有能ではないですよ……」

この会談も含めて色々と仕込んでいたのは事実である。しかし、こんなスピード展開になるとは予想していなかったのだ。

言葉を失っている徐庶に対し、声をかけたのは劉備だった。

「うーむ。徐庶さん、この後なにか予定ある?」

「いえ、とくにないですよ。飲みに行くならお供しますが」

「いや、今から劉表社長に直談判しに行くから同行して。コンサル料はあとで言い値で払う」

「は!?」

もはや1段飛ばしとか2段飛ばしといった甘っちょろい状況ではない。一気に10段くらいスキップしそうになっている。

「こういうのはスピードが命。そっちの研究所の理念の1つだろ」

「あ、えーと、確かに……」

「よし、馬車を用意しろ!」

SHJ国家戦略研究所なんて名付けるのを止めればよかった。と徐庶はほぞをかんだ。


馬車に乗せられた徐庶は自身のスマホを取り出した。諸葛亮からのLI〇Eが届いていた。

諸葛亮「フラッシュニュース!蔡瑁が曹仁にダイレクト面会!」

徐庶「確認した。劉備さんヒートアップしてこれから劉表社長に直訴モード。HELP」

諸葛亮「え?連行されてる?」

徐庶「YES」

諸葛亮「GJ!あとは任せた!」

徐庶「おいいい」

徐庶「あ、あと」

徐庶「SHJはSpeed,Honest,Jingiの略ってことにした」

諸葛亮「Jingiだけ無理矢理で草生える」

~続く~

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