マンチェスター・シティはFFPの何を破ったのか?

2020年3月13日

2月14日に、マンチェスター・シティのFFP違反による、向こう2年のチャンピオンズリーグ出場禁止という衝撃的なニュースが報道されました。今回は、マンCが「何をやらかしたのか?」を調べてみた結果をまとめます。

※海外情報なども幅広くザッピングしたため、「推測成分」が微量含まれます、ご容赦を。
※日本円換算しているところは、1ユーロ=120円、1ポンド=144円で計算しています。


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FFPの押さえておくべきポイント

FFP(Financial Fair Play)のルールと一口に言っても、本来は非常に複雑なものです。ただし、本記事を読むためには、以下の2点さえ理解してくださればOKです。(FFPのもう少し細かい説明は過去記事にてチョイチョイ書いていますので、そちらを参照してください)

FFPルールにおいて、押さえておくべき2点

  • UEFA管轄のプロクラブは直近3シーズンの合計損益をプラスにしないといけない
  • オーナーからクラブへの直接的資金注入は禁止

ひとまず、この2点が認識できていればOKです!

シティの疑惑スキーム

実質的なオーナーからの直接注入はNG

今回の一件でシティにかかっている疑惑を一言で表現すると、「お友達名義のスポンサー契約を利用して、禁じ手である『オーナーからの直接資金注入』をやっていたのではないか」ということだと推測されます。イメージ的には以下のような感じ(③の資金ルートが疑惑対象)です。

 

簡単に説明しますね。まず、マンCを含む欧州クラブは直近3シーズンの合計損益をプラスにしないといけないので、赤字を放置するワケにはいきません。何らかの収入で黒字化が必須です。

黒字化には、チケット収入、放映権収入、グッズ収入、トーナメント賞金収入等を向上させる方法もありますが、最も手っ取り早いのはスポンサーを探し出すことです。スポンサー契約で望ましいのは①のルートのように、オーナーやクラブと直接的に関係の無い、「第三者企業・団体からのスポンサー契約」で資金を得ることです。FFPのルール的にも①が正解です。

しかし、欧州メガクラブの数十億円単位の赤字を補填できる第三者スポンサーなどそうそういません。バブル期の日本ならまだしも、リーマンショック後の地球上に、そんな金を出してくれる人は極少数しかいません。とは言っても、「じゃあしょうがねぇ!」と、②ルートでオーナーが直接注入するのは、FFP的に厳禁(NG)です。

こうなると、残された道は「飛び込み営業千本ノックでスポンサーを探し出す」か、何らかのグレーな手法を導入するしかありません。このグレーな手法の代表例が③の「お友達に協力してもらい、実際はオーナーの金をお友達のスポンサー料名目で振り込んでもらう」です。ただ③も当然ながらFFPとしては不正解(NG)です。③が認められれば、「お友達が1人以上いるオーナーなら、FFPルールを無効化できる」ということになりますからね。

今回シティに持ち上がっている疑惑は、③方式を利用し、オーナーによる資金注入をスポンサー収入と偽って計上していた(スポンサー収入の水増し)のではないかということです。

具体的には・・・

シティのFFP問題をブチ上げたのは、ドイツのシュピーゲル誌です(関連記事 ※ドイツ語です)。このシュピーゲル誌が公開したシティの内部資料(と言われる文書)を読む限りでは、スキームに関わっていたメンツは以下の通りです。

  1. ADUG(アブダビ・ユナイテッドグループ)
    マンスール王子がオーナーの投資ファンドで、マンCの実質的オーナー
  2. アブダビに本拠を置くスポンサー達
    エティハド航空、エティサラット(アブダビの電気通信事業者)、アーバル投資、アブダビ環境庁
  3. マンチェスター・シティFC
    ざっくり言えばADUGの『孫会社』

金額アリで資料に載っていた代表的なケースは、15-16シーズンのエティハド航空のスポンサー契約の話です。表向きのスポンサー契約料は6750万ポンド(約97億円)でしたが、実際にエティハド航空が支払った金額は800万ポンド(約11.5億円)に過ぎず、残りの5950万ポンド(約85.5億円)はADUGが負担していたようです。

ADUGとマンチェスター・シティFCの関係は、祖父会社&孫会社に当たります。マンチェスター・シティFCの親会社がシティ・フットボール・グループで、そのまた親会社がADUGです。つまるところ、マンチェスター・シティの実質的オーナーがADUGなのです。

「実質的オーナーのADUGが、オーナーによる直接資金注入という行為を隠すために、エティハド航空のスポンサー料支払いという形にして利益計上させたのではないか」という疑惑なワケです。

問題化しているのは2012~2016年に提出したデータ

ついでに1つ注目点を挙げると、今回UEFAが問題提起している点は、2012~2016年に提出したデータだそうです。FFPは直近3年の会計データを提出する規定ですから、おそらく2009-10シーズンから、2015-16シーズンの会計において、UEFA的には不正だという点があるのでしょう。

この2009~2016って、マンチェスター・シティが急拡大した時期と一致するんですよね。タイの元首相であるタクシン氏から保有権をADUGが買い取ったのが2008年9月です。

その後、スタジアムとか練習設備を改築したり、ガンガン選手を買い漁ったりという行動に出ました。筆者の覚えている範囲でこの時期に獲得した高額選手と言えば、ロビーニョ、バロテッリ、アグエロ、フェルナンジーニョ、ゼコ、ダビドシルバ、アデバヨール、ヤヤトゥーレ、ナスリ、マンガラ、あたりでしょうか。並べてみると、思ったより当たりが多い気がしますね。

当時はプレミア下位に沈んでいたチームがこんな補強をしたのですから、そりゃ資金不足になります。実際、シュピーゲル誌の暴露した資料でも、2012年までの選手獲得費用として、4億4600万ユーロ(約540億円)が計上されています。この損失を補填しようとすると、並大抵のスポンサー契約では至難ですから、何らかのグレーな手法を取らざるをえなかったのかもしれませんね。

今後の流れ

現時点での両者の言い分は以下の通りです。

UEFA:「儂にも人情いうもんがあるんじゃ。3000万ユーロ(約36億円)の罰金と、2年間の大陸大会(UCL&EL)出禁で勘弁しちゃるけえ、従いんさい(意訳)」

シティ:「そったな言いががりをづげるんだら裁判で白黒づげるべー(意訳)」

ということで、本件はスポーツ仲裁裁判所(CAS)の最終決定を仰ぐことになりそうです。

イングランド国内での処分の可能性

UEFAからの制裁とは別に、イングランドのサッカー協会やプレミアリーグからも処分を受ける可能性があります。当然ながら、UEFAのFFPとは別に、イングランドのサッカー協会やプレミアリーグが所属クラブに課している財務ルールもありますから、今回の疑惑が後者に抵触する場合、イングランド国内において処分を受ける可能性もあります。

処分の内容としては、過去の事例を考慮すると、EFLリーグ2(イングランド4部)への降格があり得るようです。そうなると、プレミアに帰って来るのに3シーズンを要することになります。

また、マンCの運営元であるシティ・フットボール・グループには、現在中国資本やアメリカ資本も入っています。マンCがチャンピオンズリーグに出られなかったり、プレミアから降格するとなると、そう言った米中の出資者の資産価値に大きなダメージを及ぼすことになりますから、政治的な動きもあるかもしれません。(投資は自己責任ですけどね!)

まとめ

今回マンCに対して持ち上がっている疑惑は、FFPルールにおいて禁じ手とされる「オーナー直接資本注入」を実質的にやったのではないか、というお話でした。

とは言え、今のところUEFAはマンCに対する疑惑を事細かに公表していないようですから(これから裁判になるのだから当然ですね)、真相がどうかは今後明らかになっていくと思われます。続報に期待しましょう。

☆追伸
BBCのラジオ番組に出演したシティファンが気概のある言葉を残していました「上等だ! 4年にしてみろ!」2年間のCL出場禁止処分にマンCファンが意外な反応を示したワケは?)。興味のある方は読んでみてください。