高校サッカーの留学生にFIFAが厳しいワケ

2020年2月20日

高校サッカーの留学生が禁止になるかもしれません。私としては「まぁFIFA的にはそうなるわな」って思いました。その理由などを解説していきます。

参考ニュースはコチラ⇒<高校サッカー>留学生の公式戦出場禁止へ(Yahooニュース)

問題視されている「人身売買のような青田買い」

欧州サッカーの『育成』という場面において、以前から問題視されているのが「人身売買まがいの若年選手の青田買いが発生している」ということです。

数年前までは、とくにリーガやプレミアのクラブが、発展途上国の10歳ちょっとで才能の光る子を早々に買い取り、自国クラブに連れてきて育成するということを熱心にやっていました。その買い取り過程で、途上国の人身売買ブローカーなんかが噛んでしまっており、「貧しい一家の子供がサッカーの素質目当てに買われてく」ってな状況になっていたんですね。

この状況は「人権」って観点からは非常にマズイと言えますから、FIFAとしては対策をしなければいけなくなったんですね。

現在は18歳未満選手の国際移籍は原則禁止

こういった状況を打破するために、FIFAは2010年頃に「18歳未満選手の国際移籍は原則禁止」というルールを設けました。(※FIFA移籍条項19条)

ちなみに、久保建英選手がバルセロナユースから追い出されたり、2014年のバルセロナ補強禁止処分、2017年アトレチコ補強禁止処分、2019年のチェルシー補強禁止処分などが下されたのはこの新設されたルールに違反していたからです。

ただ、18歳未満の国際移籍禁止にも例外事項があります。以下の3点のいずれかに該当する場合は18歳未満でも国際移籍OKです。

例外1:選手の両親がサッカー以外の目的で移住・転居し、子供がそれに付いていく場合

例外2:16歳以上18歳未満の選手で、居住国と移籍先クラブがともにEU圏内である場合

例外3:選手の家が国境から50km以内にあり、移籍先クラブがその国境の反対側50km以内にある場合

日本の高校留学生がこれを満たすのは困難です。地理的条件から、例外2と例外3はほぼ確実に満たせません。EU圏内でもないし、韓国南端の釜山と博多間の直線距離で200㎞ありますからね。また、今の留学生制度において親が付いてくることも稀ですから、例外1も厳しいと言えます。

抜け道を潰すため?

「日本の留学生はそんなサッカー選手が買われるような制度ではない」とか「日本の高校はサッカークラブではないし、選手として契約していない」といった反論があるのは理解できます。

しかし、そういった理由で日本の留学生制度を許してしまうと、FIFAの移籍ルールに抜け道ができちゃうんですよね。

例えばこういうスキームが思いつきます。

1.欧州有力クラブが発展途上国で14歳くらいの良い選手を発見する

2.その選手を日本のとあるA高校に留学生として推薦しつつ、クラブはA高校に「お金を寄付」をする

3.A高校は推薦に基づいてその選手を留学生として迎える

4.選手は日本で高校生活を送り、A高校を卒業したら寄付主クラブへ旅立つ

つまり、日本の高校サッカー部が、欧州サッカークラブの育成下請け化しちゃう可能性があるんですね。こういう可能性があるので、日本の留学生文化だ何だって言ったところで、FIFA的には許可できないと思いますね。

じゃあ高校サッカーがFIFAから離脱だ!?

「高校サッカーがFIFAの管轄から抜ければいーじゃん」って意見もあるかもしれません。これは、制度的にはたぶん可能でしょう。日本の高校は1国の教育機関ですから、独立性を高めるとかなんとかいって高校とFIFAを切り離すことは可能だと思います。

逆に問題は、「FIFA側がそれに対してどんな対抗措置を課すか分からない」ってことです。

高卒選手のFIFA登録クラブへの加入を邪魔する、あるいは実質禁止するような対抗措置を発動されてしまっては、留学生制度を生かすために高校サッカーが滅びかねません。そういう事態が起きうるため、実質的にこの案も難しいと言えるでしょう。

まとめ

おそらく、高校サッカーの留学生は禁止になるのではなかろうかと思います。日本サッカー協会に政治力があれば、何らかの譲歩案は引き出せるかもしれませんが、どうでしょうかねぇ。