いまさら『四月は君の嘘』を布教したい

2020年6月4日

4月に発売された『四月は君の嘘』のブルーレイBoxを購入し、久々に一挙見したので布教のためにレビューを書きました。

本作は2014年10月~2015年3月末にかけてオンエアされていたアニメ作品です。まだ見ていない人がいたならば、首根っこを掴んで、目ん玉ひん剥いてでも見せてやりたいアニメですね。

※視聴歴のある方はブルーレイBoxご購入を! ない方は記事を読んでから購入どうぞ!

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本記事はネタバレがあります。気になる方は作品本編をチェックしてから再度アクセスしてくださいネ!

『四月は君の嘘』ってどんな作品?

原作情報

原作は漫画作品『四月は君の嘘』で、2011年から2015年にかけて月刊少年マガジンに連載されていました。完結済みの作品で、コミックスは全11巻です。

著者は新川直司先生。今は女子サッカーを主題にした『さよなら私のクラマー』を、同じく月マガで連載されている方ですね。

「アニメも良いけど、原作漫画の方はもっと良かった!」というファンもいますので、絵柄が気に入るようであれば、こちらから手に取ってみるのも良いかもしれません。

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作品ジャンル

青春恋愛+音楽アニメ」にカテゴライズされる作品です。ただし、「部活で全国制覇だ!」という方向性ではなく、悲劇色の強めな人間ドラマと言った方が正確でしょう。「鮮やかな絵柄に騙された…」という人が多い、罪な作品です。(褒めていますよ)

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

超ザックリと言ってしまえば、悩みを抱えて演奏のできなくなったピアニストの少年が、女の子に出会って恋したことをキッカケに再度演奏し始める。しかし、今度はその女の子が病に倒れる。主人公はまた悩みに落ちるが、演奏家として舞台に立つことを選ぶ。というお話です。

少年ジャンプ3原則(友情努力勝利)の『勝利』が、『希望』に置き換わったパターンとも言えます。

「形のある何かを勝ち取ったわけではないが、生きる道は見えた」っていうような展開が好きな人にはオススメできる作品ですね。

主要人物と大まかな流れ

主要人物と、超大雑把な流れは以下の通りです。本編視聴済みの方は読み飛ばしてください。

メインキャラクター4人

本作のメインキャラクターは以下の4人。全員、市立墨谷中学校という学校の3年生で、公生・椿・亮太は幼馴染の仲良し3人組です。

有馬公生(ありま こうせい)/CV花江夏樹
主人公。“元"天才子供ピアニスト。以前はピアノコンクール荒らしとして名高かった。しかし、2年前の母親の死をキッカケに「演奏中に自分のピアノの音が聴こえなくなる」というトラウマ症状に悩まされるようになり、ピアノが弾けなくなっている

・宮園かをり(みやぞの かをり)/CV種田梨沙
ヒロイン。同じく中3でヴァイオリニスト。1話で公生とは知り合うが、かをりはピアノコンクールに出ていた時代の公生を知っており、公生をピアノの世界に戻そうと引っ掻き回す。不治の病に侵されており、物語が進むにつれて病状が悪化する。

・澤部椿(さわべ つばき)/CV佐倉綾音
公生の隣近所に住んでいる幼馴染の女子。ソフトボール部の主力選手。

・渡亮太(わたり りょうた)/CV逢坂良太
公生&椿と幼馴染の男子。サッカー部キャプテンでモテモテ。

大まかな流れ

物語の開始前、有馬公生は母親の死を契機に、「演奏中に自分のピアノの音が聴こえなくなる」というトラウマ症状に悩まされ、ピアノから離れます。

演奏中に音が聴こえなくなる公生 ©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

その2年後が1話です。公生は宮園かをりという同級生のヴァイオリニストと出会います。彼女に引き摺られるようにして舞台に上がって再度演奏するようになって、トラウマを克服します。

この辺りで公生は宮園かをりへの好意を自覚しますが、かをりは渡亮太のことが好きだと耳にしていたので、かをりに惹かれつつも一人の友人として接し続けます。

そんな中、今度は宮園かをりが病に倒れて入院状態となり、病状は日に日に悪化していきます。かをりと母を重ねて、「ピアノを弾いて自分が思いを伝えようとすると、その肝心の相手が病気になって死を迎える」という状況に公生は悩みます。

ですが、彼はピアノを弾くことを選び、かをりの死の瞬間まで演奏を行いました。

かをりの死後、彼女からの手紙を受け取った公生は、手紙の中で「かをりが本当に好きだったのは公生であり、渡良太が好きだというのは、幼馴染3人仲間に割り込むためについた嘘だった」と打ち明けられます。

超大雑把ですが、全体の流れはこんな感じです。

感想・総評など

心理描写がイイ

この作品は「どんでん返しのハッピーエンドで、めっちゃ楽しい!」という話ではありません

主人公である有馬公生の辛さや苦悩に共感し、「それでも音楽家・演奏家として生きていくのだ」という彼の決意を感じ取ることが醍醐味な作品です。

その醍醐味を成り立たせているのが、誌的なセリフと、容赦ないシリアスシーンです。

誌的なセリフが格好良くハマる

『四月は君の嘘』のセリフは文字面だけを追うと、ちょっと格好をつけたセリフ、誌的でキザなセリフが多いです。ただ、それが雰囲気を壊すどころか、胸に沁みる感じになっています。

こうなる理由は、おそらく容赦なくシリアスシーンを描いているからです。キャラクター達が苦悩するシーンをこれでもかと盛り込んで、苛酷な状況という印象付けをしっかりしているから、それを挽回するための言葉として刺さるんじゃないかと思います。

例えば4話、公生とかをりが一緒に出たコンクールで、演奏を止めてしまった公生に対して、かをりが「アゲイン!」と呼び掛けるシーン。ここ、たぶん適当に描いていたら「は? アゲインって何?」ってなると思うんですよ。

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

でも、そうはなっていません。そこまで公生の恐怖感や孤立感をしこたま描いているので、視聴者は「アゲイン!」を公正の目線で「救いの手が差し伸べられた」みたいに感じちゃうんです。

ちなみに、このシーンは「かをりが傍若無人で気に入らない」と言っていた人が、「かをりカッコイイ!」なんて、コロッと宗旨替えする典型シーンです。(それゆえカメ吉は「とりあえず4話まで見ろ!」と友人には推奨しています)

蛇足ですが、単純に「美しいシリアス描写」だとカメ吉が思っているシーンがあるので、紹介しておきます。9話の演奏会中の、鍵盤が消えていくような描写シーン(下絵)です。何度見ても息を飲んでしまいますね。

鍵盤が消えていくシーン©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

こういったシーンを逃げずに容赦なく描いているからこそ、公生の苦しみや恐怖が手に取るように分かって共感でき、深い感動と心に"爪あと"を残してくれる作品になったのだと思います。

キャスト陣が抜群の演技を披露

この作品が素晴らしい完成度を誇った要因として、キャスト陣の抜群の演技という要素もあります。

「音が聴こえない」と幼い公生が震えながら泣いているシーンは花江夏樹さんの演技力&演技幅の広さが凝縮されていますし、「病を自覚しながら気丈に振舞っているが、時に不安定になる」という宮園かをりの難しい雰囲気を表現できているのは、さすが種田梨沙さんと言ったところです。

ただ、カメ吉が当時驚いたのは澤部椿を担当した佐倉綾音さんなんですよね。オンエア当時、佐倉さんキャラとしては『のんのんびより』の"なっつん"こと越谷夏海や、『ごちうさ』のココアの印象が強かったので、こんなに甘酸っぱい青春感を出せる声優さんだとは想像していなかったんです。

澤部椿©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

15話で、先輩にフラれた(フッた?)後、公生がピアノを弾いている横に座って泣きながら「ちょっとは慰めろ!」と強がるシーンを見た日にはもう「参りました」という感じです。(本音を正確に言うと「矢作パイセンにラジオでいじられているだけの若手では無かったんですね」でした)

大人側の苦悩もイイ

あと、忘れずに推しておきたいのが、中盤から本格登場する瀬戸紘子(CV園崎未恵)です。少年少女達の苦悩が中心となっている本作において、「大人ゆえの後悔や悩みを抱えながら、子供達に道を示していく」という役割をしっかり果たしてくれるキャラクターです。

実際、今回ブルーレイで見直していて一番グッと来たのが最終話じゃなくて13話だったんですよね。ガラコンサートにかをりが現れず、公生が1人でピアノを弾く回です。

この話で、有馬早希のスパルタ教育の真意や、瀬戸紘子が後悔している理由が描かれるのですが、この回想シーンの切なさが半端ないです。「自分が公生を音楽に引き込んでしまった」という責任を重く受け止めている雰囲気が出ていて涙を誘います。

加えて、母にやっと「さよなら」できたかと感動させたこの13話ラストで、「悲しみが成長させる。公生が進むのなら…、失って進むのかもしれない」というところは、愛情と悲嘆が入り混じっていて、もう「凄い」としか言いようがありません。

ちなみにカメ吉は、園崎未恵さんが秘かに大好きです。最近のアニメでは、『ヒロアカ』の志村菜奈役と言うのが一番伝わりやすいでしょうか。園崎さんは凛々しくてカッコ良く、それでいて母性あるような優しい成人女性を演じられる点が魅力的ですね。

この点でオススメの作品を1つ挙げておきます。洋ドラの『クリミナル・マインド』シリーズです。園崎さんが吹替を担当している『JJ(ジェニファー・ジャロウ)』ってキャラクターがまぁ美人でカッコ良くてイイんです。とくに、クライムサスペンスが好きな人にはオススメですよ!

クリミナル・マインドを視聴する

音楽アニメの宿命である「演奏シーンの賛否」

1点だけ、注文がつくとしたら、音楽系アニメの宿命である「演奏シーンの賛否」でしょうか。

本作はピアノ演奏のクオリティは結構高いと思います。公生のメンタル状態の変化に合わせて、演奏の雰囲気を変えるという難しいポイントもクリアしていたと思います。

ただ、「ちょっと演奏中のモノローグ(1人語り)が多くないか?」と言われると否定できない感はあります。モノローグを入れようとすると、どうしても演奏の盛り上がりどころに被ることになるので、「演奏を聴かせてくれ!」って感じる人がいても不思議ではないです。

カメ吉としては、モノローグは気にならなかったのですが、「この効果音いらない」と強く思ったシーンはあります。10話の中盤で公生が演奏中断から再開した後、「かをりのために弾こう」と思い直して音色が変わるシーンです。

©新川直司・講談社/「四月は君の嘘」製作委員会

上図のように、音色の変化を表現する光の小さい玉が降って来るのですが、「シュイーン」という効果音の主張が強くて演奏の邪魔でした。音楽に強いこだわりを持つ人ほど、こういうポイントが多くあるかもしれませんね。

評価まとめ!

映像の美しさ★★★★シリアスさと反比例するかのように色鮮やか
音楽★★★★★前期OP「光るなら」が凄く良い
劇中の演奏も満足
ストーリー展開★★★★★22話でしっかりまとまる
メリハリも効いている
キャラクター★★★★★書ききれないレベルで魅力が満載
オススメする?オススメ自信を持ってオススメ

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本作は魅力を語り出すと止まらないアニメです。

今回は、あまりにも長くなりそうなので、ピアノのライバルとして出てくる相座武士井川絵見、公生の初弟子となる相座凪については省略しましたし、母親である有馬早希とのエピソードについても割愛しました。1回1回の演奏についても、語りたいことは山ほどあります。

ただ、本作最大の魅力は最初に言った通り、有馬公生の苦悩と希望、そして決意を味わうことだと思います。「感情移入して、感動できるアニメが見たい」という人にはぜひ見て欲しい作品です!

※本記事は2020年6月2日時点の情報に基づいて作成しております。最新情報はリンク先の各サイトにてご確認ください

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