フェニックスファイナンス-1章9『美味しい投資にゃ罠が有る』後編
1章9『美味しい投資にゃ罠が有る』後編
鷹峰のからビブラン大臣の横領、もしくは脱税と言う推測を聞いて、ソニアは腑に落ちた表情を浮かべる。
「納得。どっちだったとしても、ビブランらしいと思うわ。ただ、それがどう儲けに繋がるの? マグナ会の連中を追っ払って証拠をゲットして大臣を告発したって、名誉になってもお金にはならないわよ。まぁ、アイツのクビが飛ぶのなら、私としては嬉しいけれど」
「はは、クビにするのもいいが、それはまた別の機会にしよう。今回は、その証拠を高く買ってくれる人に売るんだよ。物件と帳簿をセットでな。そのためには一度マグナ会を追っ払って、証拠をガッチリ確保しないといけない」
「なるほど。ただ、今日カジノを監視してたけど、カジノ内に10人以上は居そうなのよね。私一人じゃ追っ払うのも荷が重いわ。だから、傭兵を雇うお金が要るんだけど」
「それ以外にも色々と金は要りそうだし、どっかから借りないとな」
「はい、できた」
ソニアがスーツの修復を終えた。上手く縫えており、左右の差も分からない状態に直されている。
「ありがとう。ホントに上手いもんだな」
裁縫セットを片づけながらソニアが言った。
「どういたしまして。で、借金のアテはあるの?」
鷹峰は、試着しようとスーツを背中に回しつつ、ニヤリと笑みを浮かべて答える。
「ああ、飛び切り笑い話にできるアテがある」
ルヌギア歴 1685年 4月6日 アテス ビブラン大臣の私邸
ビブランがたまの休日をゆっくり過ごし、昼酒をあおっていい気持ちになっていた時、使用人が来客を告げた。
「元金山防衛隊のソニア様と、もう一方見慣れぬ男性がお越しになっていますが」
ビブランはどうしようか悩んだが、用事も無かったので会う事にした。
応接間に入ると、椅子には鷹峰とソニアが座っていた。
「お休みのところアポ無しでお邪魔して申し訳ありません」
鷹峰が立ちあがって挨拶しようとしたのを手で制し、ビブランは対面に座った。
「ま、構わんよ。何用かな?」
「はい。例の債権回収です」
それを聞いてビブランが「おっ」と喜色を浮かべる。
「何件かまわっとるとは聞いておったが、どこか回収できそうなのか?」
「ええ、やっと1件見通しが立ちそうです」
「それはいい知らせじゃが、それでわしに何をしろというのじゃ?」
ビブランはテーブルの上の、龍の形をした陶器製の置物を撫でながら言った。
「債権回収を行うのに、土地の登記やら手付金やらで先立つモノが必要でして、ビブラン様に800万フェンほどお借りしたく存じます。2週間後に1000万フェンにしてお返しします」
いきなりの金の無心にビブランは困惑する。それを見とったソニアが口を開いた。
「債権回収が成功すれば、どうせあんたにも何%かマージンが入るんでしょ。それにこっちは2週間で25%の利子乗っけて返してやるって言ってるのよ。断る方がバカなくらい美味しい投資だと思うけどね」
ビブランは少しイラつきを表情に出しつつ、鷹峰に聞いた。
「本当にできるのか?」
「はい。2週間で稼ぎ出してお返しいたします。ダメだったらお城の債権回収から雑巾かけまで、なんでも請負いますよ」
「どうやってそんなに儲けるんじゃ?」
ソニアがそれを遮る。
「そいつは秘密だよ。それを教えちゃあんたやカイエン銀行サンが実行しちまうだろ。ま、あんたが貸さないってんなら、別の御大尽さんに声をかけるだけね」
大臣は顎に手をあて、少し考え込んでから決心した。
「わかった。返済期日は4月20日、返済金額は1000万でいいんだな? あとから法定金利がどうとか言うんじゃないぞ」
鷹峰は力強く頷き、ビブランの目を見て言った。
「ありがとうございます。期日までに必ずお返しします」
鷹峰とソニアは大臣から800万フェン(返済額は利子200万を加えた1000万)を借りることに成功し、屋敷を出た。
「アンタに言われた通りのセリフを言ったけど、なんであんなに上手く行くの? あの守銭奴がこんな簡単にポンと金を出すなんて」
「ソニアに馬鹿にされたからだよ。『お前にバカとは言われたくない』って顔してただろ」
「あー、なるほ……」
ソニアは台詞を途中で止め、鷹峰の背中にミドルキックを入れた。
「理解はしたけど、なんかむかついた」
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