フェニックスファイナンス-1章11『カジノクリーン作戦』前編
前回までのあらすじ
鷹峰は異世界の不良債権処理に首を突っ込んだことから、モルゲン遊興というカジノ運営ギルドの保有するを元カジノ不動産を使った荒稼ぎを思いついた。現在はならず者達に占拠されている元カジノ店舗を掃除し、高値で売ろうと画策。原資を大臣から借り入れ、カジノの所有権を手に入れた。
1章11『カジノクリーン作戦』前編
ルヌギア歴 1685年 4月12日 アテス ヘルメース地区 カジノ近隣
「すごいですねぇー。どうやったらこんな物凄いメンツを集められるんですかぁ?」
カジノの近所に集合した傭兵達を見たハイディが言った。
「そんな凄い奴らなのか?」
鷹峰の問いに対し、ハイディは傭兵の中でリーダー格のスキンヘッドの中年男性を指さす。
「あの人は確かー、ユゴ盆地でブールグラスを盗んで食べていたドラゴンを退治したボメルって人ですー。ドラゴンが火を吐いているのにも関わらず、口に手を突っ込んでー、『胃の中に入れりゃ許されると思ってんじゃねえ! 吐き出せコラァ!』って啖呵を切ったって話が有名ですねー」
バケモノじみた豪傑である。『日本人』と言って警戒される自分より、よっぽどイレギュラーな存在ではなかろうかと鷹峰は感じた。
「その左の2人は、昨夏にアテス近郊のキラービー80匹が集まる巣を撤去したレウナとモーリーさんですねー。ちなみに、キラービーって人間の子供サイズの蜂で、一般人は刺されたら即死ですー」
現代日本においては、スズメバチの巣の撤去にすら四苦八苦しているのに、子供サイズの蜂が80匹というのは恐ろしい話だ。ただ、レウナとモーリーとやら2人の装備を見た印象では、蜂の攻撃を防げるような重装備ではない点が不思議に思われる。敏捷性に優れ、回避するスキルがあるのだろうか。もしくは、何らかの必殺攻撃を持っており、先制の一撃で倒していくスタイルなのかもしれない。
「あとの2人は、えーと……」
言葉が出て来ないハイディに変わって、背後からソニアが言った。
「オプタティオの御前剣技大会2連覇中のマギュンと、遠視・索敵魔法を使用して探偵業をやってるクレタね。クレタは年始に盗賊団の一斉摘発に協力して有名になったわね」
残る2人を説明したソニアにハイディが聞いた。
「ソニアさん、どうやってこの人達を集めたんですかー? 冒険者ギルド経由で雇おうとしたら、いくらかかるか分かりませんし、そもそもお金を積めば寄ってくるってクラスの人達じゃないですよねー?」
こちらの世間話を耳に留めたのか、竜退治のボメルが近寄ってきて答えた。
「報酬は安くてもソニアちゃんに貸しを作れるなら無駄にはならんと思ってね」
「私、貸し借りを気にする性格じゃないの。知ってるでしょ?」
ソニアはいたずらっぽい笑みを浮かべてボメルに返す。ボメルは「そりゃねぇよー」と自らのスキンヘッドを叩いてカラカラと笑った。
世間話にも一段落つき、関係者も全員出揃った様子であったので、鷹峰が説明を始める。
「さて、そろそろ始めよう。今日の手順だが、まずは、俺とロゼが言ってマグナ会とやらに退去勧告をする。大人しく出ていくならそれで終了」
「ま、そうはならないだろうね」
ソニアの言葉に鷹峰が頷く。
「連中にとっちゃ法律的な所有者が誰かってのは、どうでもいい話だからな。居座れと命令している雇い主様の言葉の方が重要だろう」
皆が納得したのを見て、鷹峰が続ける。
「ってことで、ダメだった場合は強制排除に切り替える。あくまで排除なので、相手が刃物を見せない限り、こちらも向こうを殺さないこと」
鷹峰の説明にロゼが補足する。
「ただ、鈍器だとしても、致命傷を与えそうなモノがあれば正当防衛になります。危ないと思った時は迷わずに、自身の安全を優先してください」
ソニアと傭兵5名が頷く。
「ロゼさーん。私の弓矢は、向こうが本気にならないと使っちゃダメですかー?」
「弓矢ですか? そうですね、殺傷力の無い、練習用の矢であれば問題ないと思いますが…」
傭兵のリーダー格であるボメルが冷やかし口調で言った。
「お嬢ちゃん、弓矢ホントに打てるのかい? 俺らを撃たないでくれよ」
ソニアがそれを否定した。
「この子はあたしなんかより格段に上手いから、心配するだけ野暮ってレベルよ」
そう言ったソニアは長く、頑丈そうな木製の棒を持っている。長さは鷹峰の身長より少し長いくらい、1.8メートルくらいだろうか。ソニアの槍術の一端を垣間見れるかもしれない。
「初手から向こうが俺とロゼに危害を加えてきたならば、合図に右手を上げる。その場合は即突入し、制圧を」
一同がコクリと頷く。鷹峰が気合を入れるかのようにパンっと手をたたいた。
「よし。それじゃあ、お仕事といこう」
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