なぜラ・リーガやリーグ・アンに日本人選手が少ないのか

2020年4月3日

今年の移籍期間も一段落しました。日本人の若手がドンドン海外挑戦している様子なので、カメ吉としては非常に楽しみにしています。

さて、今回は各国リーグの「外国人枠」についての考察です。

ラ・リーガやプレミアに日本人選手が少ない理由を、外国人枠制度から考えてみましょう。

外国人枠がゆる~いドイツ&ベルギー

日本人が比較的多い、ブンデスリーガやベルギーリーグは外国人枠がユルいです。

ブンデスリーガ(ドイツ)&ジュピラー・プロリーグ(ベルギー)

・外国人枠、EU圏外枠、ともに無し

このドイツとベルギーにはEU圏外枠がありません

ただし、「自国籍選手を最低〇〇名登録」とか「国内育成選手を最低〇〇名登録」という条件はあります。

そういったホームグロウン関連の条項を満たせば、「南米だろうがアフリカだろうがアジアだろうが、人類でありさえすれば何人雇おうがOK」というのがこの2リーグの特徴です。

日本人選手が多く所属する要因の1つが、このユル~い外国人枠なのは間違い無いでしょう。

ややこしいイタリアとイングランド

イタリアとイングランドは正直ややこしいです。EU圏外選手に対して門戸は狭いと言えるかもしれません。

セリエA(イタリア)

移籍期間開始前日におけるチームのEU圏外選手の数によって、シーズン中に獲得できるEU圏外選手の数が変動します。(数字が諸説あり、最新ルールは違っている可能性があります)

移籍期間開始前日に保有中のEU圏外選手数無条件で獲得できるEU圏外選手の数条件付きで獲得できるEU圏外選手の数
0人or1人3人なし
2人2人EU圏外選手1人を国外放出するか契約解除すれば、もう1人追加でEU圏外選手の獲得が可能
3人以上1人EU圏外選手1人を国外放出すれば、もう1人追加でEU圏外選手の獲得が可能(契約解除では認められない)

イタリア国内で移籍した場合は、無制限に獲得可能。ただし、保有するEU圏外選手にはカウントされる(チェゼーナからインテルに移籍した長友はこれに当てはまっていた)
※EFTA加盟国はEU圏内扱い(スイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインが該当)

イタリア国内の移籍であれば自由という異色の制度です。

この制度によって、セリエAの中下位チームで活躍したEU圏外選手が、ユベントス、ミラン、インテルといった国内ビッグクラブに移籍する流れができています。

選手側から見ると、「一端入ってしまえば、あとはラクチン」という珍しいルールと言えます。

プレミアリーグ(イングランド)

登録の制限はありませんが、EU圏外選手は労働許可(就労ビザ)の面で制限があります。

まず、労働許可が発行される最も基本的な条件は、「国際Aマッチの出場率」による選定を通過することです。出場率の基準は以下の表のとおり、所属国のFIFAランキングによって違います。

所属国のFIFAランキング労働許可の発行条件となる出場率(※対象は過去2年間)
1位~10位国際Aマッチの公式戦で30%以上の試合に出場
11位~20位国際Aマッチの公式戦で45%以上の試合に出場
21位~30位国際Aマッチの公式戦で60%以上の試合に出場
31位~50位国際Aマッチの公式戦で75%以上の試合に出場

ただし、これだけだとFIFAランキング51位以下の国籍の選手が移籍できなくなります。典型例は、ガボン国籍のオーバメヤンなどでしょうか。

そのため補助措置があります。(ココはめちゃ複雑なので、代表的で決定的な2つのものだけ書きます)

・移籍金が前シーズンのプレミアリーグのクラブが払った全ての移籍金の上位25%に相当する金額
・選手の報酬額がクラブ内において、上位25%に含まれる

こういったケースに該当すれば、概ね許可は出ます。

また、オーストラリアやニュージーランドなど英連邦に属する国の選手は、法律上英国人と同じ扱いを受けるため、労働許可の面はクリアしやすいようです。

もう1つ気になるのは迷走しているブレグジットですね。この政治イベントがどう転ぶかで、一挙に制度が変わる可能性もありそうです。

コトヌー協定がカギとなっているスペイン&フランス

スペイン・フランスはともに以下が基本ルールです。

ラ・リーガ(スペイン)&リーグ・アン(フランス)

EU圏外選手の登録は1チーム3人まで

※ただし、EFTA加盟国とコトヌー協定加盟国はEU圏外扱いされない
※スペインリーグはトルコもEU圏外扱いしない

コトヌー協定ってなんじゃらほい?

コトヌー協定とはEUとACP諸国(アフリカ・カリブ海・太平洋諸国)が結んだ経済協定です。要はEUがACP諸国の発展に協力するという国際協定ですね。(ACP諸国に含まれる国家群はwikipedia参照)

スペインとフランスのサッカー協会はこのコトヌー協定を尊重し、ACP諸国の選手(労働者)が出稼ぎしやすいように、EU圏外扱いからは除外(EU圏内と同等の扱い)しているワケですな。

南米・アジア・EU外ヨーロッパ諸国で3枠を取り合う構図

コトヌー協定によって、アフリカ出身選手は一部を除いて圏外扱いされません。セネガルとかナイジェリアとかガーナ人は、スペインとフランスではEU圏外枠争いに含まれないのです。

つまり、実質的にはEU圏外選手の3人枠を南米とEU外ヨーロッパ諸国とアジアで奪い合っていると言えるのです。

こういう仕組みでは、日本人が少なくなってしまうのも仕方ありませんな。

まとめ

「日本人の移籍が少ないリーグは、外国人枠がだいたい厳しい傾向にある」と言えるでしょう。

「スペインのテクニック水準に日本人がウンヌン」
「プレミアの激しいフィジカル勝負にアジア人の肉体ではウンタラ」
「フランスはフランス語が難しくてナンタラ」
「イタリアはマフィアが怖くてパスタが美味しいからドーノコーノ」

といった意見を見かけますが、外国人枠や労働許可の問題の方が大きいように思いますね。

(まあ、日本人選手の平均値が南米を超えているような状況にあれば、「外国人枠なんて屁のカッパ」にできるのかもしれませんが……)