ボスマン移籍って何?
サッカーの移籍期間においてボスマン移籍って単語を聞くことがありますよね。今回は、このボスマン移籍ってのが何なのかを解説します!
ボスマンの由来は人の名前
まず、「ボスマン移籍」という言葉についてですが、移籍に関する裁判を起こした実在のサッカー選手の名前が由来となっています。その選手とは90年代にベルギーリーグでプレーしていた、ジャン・マルク・ボスマンです。失礼な表現かもしれませんが、ぶっちゃけプレイヤーとしての知名度はあんまり高くない人です。
ボスマンは90年の6月30日に、当時所属していたRFCリエージュとの契約が満了となり、翌年度はフランスのUSLダンケルクに所属することがほぼ決まっていました。
しかし、RFCリエージュがこの移籍に対して移籍金を要求し、USLダンケルクと折り合うことができなかったため、ボスマンのUSLダンケルク入団がでご破算になってしまったのです。(※RFCリエージュは川島や永井の所属していたスタンダールリエージュとは別のチーム)
さて、この一件ですが、当時のUEFAのルールにおいては『問題ナシ』だったんですね。当時のUEFAのルールは今の日本のプロ野球界などと同じく、「契約満了と保有権の放棄は別」でしたので、RFCリエージュが移籍金を要求するのはごく自然なことだったんです。
ですが、このルールに納得のいかないボスマン選手は、これをサッカー協会などに告発するのではなく、UEFAを相手取って欧州司法裁判所への告訴するという強硬手段に出ます。この法廷闘争の結果、95年に以下2点の判決が出たのです。
1.契約満了した選手の保有権をクラブは主張できない(=契約が終了した時点で自由移籍可能)
2.EU加盟国籍所有選手のEU圏内就労は制限されない(=EU圏内での移籍自由化)
契約満了によって0円で他クラブに移籍すること=ボスマン移籍
上記判決によって、契約期間満了となった選手は前所属クラブから拘束を受けることなく、移籍金ゼロで他クラブへ移籍できるようになりました。そして、この事件が由来となって、契約満了となった選手が移籍金ゼロで移籍することを「ボスマン移籍」と呼ぶようになったのです。
イメージとしては、「契約社員が次の仕事探しをするケース」を思い浮かべると良いかもしれません。契約社員は契約期間が切れると、所属していた企業から離れて、自由に仕事探しをしますよね。それと同じで、契約期間が切れた選手は自由に次の所属クラブを探し、勝手に契約することが可能となったのです。
(逆を言えば、ボスマン判決以前は、「契約が切れても、勝手に次の仕事を探すな」っていうブラック業界だったとも言えますね…)
ちなみに現在は、選手がどこかのチームに所属していても、契約満了の6ヶ月前から他クラブと交渉可能というルールになっています。6月末に契約期限を迎える選手は、1月頭から他チームとの交渉が解禁されます。
ボスマン判決とボスマン移籍の登場による影響
ボスマン移籍が登場したことによって、色々な影響が出ています。3つほどピックアップして説明しますね。
クラブ間格差の拡大
ボスマン判決によって、選手側の権利が拡大されました。EU圏内国籍を持つ選手であれば、契約さえ満了してしまえばEU圏内のどこのクラブとだろうが契約が可能となったのです。
この状況は、ビッグクラブにとっては有利です。獲得したい選手をそそのかして現所属クラブとの契約更新を拒否するように仕向け、契約満了を迎えることができれば、移籍金ゼロで獲得できるのです。でもこれって、選手を取られてしまう、中堅~弱小のクラブにとっては頭を抱えたくなる事態です。
如実だったケースは、ボスマン判決直後期のアヤックスですね。アヤックスは95年にベルカンプ、ファンデルサール、ダービッツ、クライファート、セードルフなどを擁してUCL優勝を果たしました。しかし、選手が移籍マーケットで人気銘柄化し、クライファートとダービッツがボスマン移籍でミランに移ってしまったのです。
最近だと、2014年にドルトムントからバイエルンに移籍したレヴァンドフスキなんかも当てはまるでしょうか。ドルトムントクラスのビッグクラブでさえ、頭を抱える状況なワケです。
一部の大人気メガクラブがより有利な状況になり、それ以外のクラブは育てた選手を移籍金ゼロで手放す恐怖と戦うことになりました。
延長拒否選手が「干される」
選手の権利が拡大した結果、クラブ側はゼロ円移籍に怯えることとなりました。そのため、クラブは選手の契約延長拒否に警戒するようになっています。契約満了さえ回避すれば0円移籍は起きませんので、スムーズな契約延長が重要になったのです。
しかし、中堅~弱小クラブには、選手の契約延長を促進するような潤沢な予算はありません。『アメとムチ』で言えば、契約延長のアメを用意することが難しい以上、ムチで契約延長を迫るしかありません。
このムチとして使われるのが、「干す」ですね。契約延長を拒否した選手を2軍に落としたり、練習に参加させなかったり、試合に出さないといった扱いで脅し、ムチとするワケですね。
最近だとPSGからユベントスに移籍したラビオなんかが典型例ですね。2018年末頃に契約延長を拒否したことから、PSGのフロントが懲罰的に「干す」ことを決定し、契約満了までの半年の間、リザーブチーム送りになってしまいました。ファンからすると不毛なので止めて欲しいんですが、「クラブ内統制のため」と言われると一理あるのが難しいところです。
契約残り1年の選手が、移籍期間にターゲットとなる
有名選手や将来有望な選手の残り契約期間が1年になると、クラブ側は翌年の0円移籍に恐怖するため、「この移籍期間に売却を決めたい!」って考えることが多くなります。
ただ、当然ながら売却をスムーズに進めるためには要求する移籍金を下げないといけません。これは買う側からするとチャンスとも言えますので、残り期間1年未満の選手は移籍マーケットでターゲットとなることが多いです。
この例として最適なのは、2019年夏にチェルシーからレアルマドリードに移籍したアザールですね。チェルシーは移籍金を180億円程度要求していたようですが、結局は125億円程度で決着した模様です。55億もディスカウントされましたが、残り1年だったので売らざるを得なかったんでしょうね。
Jリーグはどうなってるの?
日本のJリーグはボスマン移籍を2010年に導入しています。なので、現Jリーガーは契約期間が満了すれば、どこのクラブとも自由に契約交渉が可能となります。最近の実例だと、2017年にマリノスからフロンターレに0円移籍した齋藤学選手なんかが有名ですね。
ただ、欧州サッカーと違って、「協会もクラブも、良くも悪くも冷徹になりきれない」っていう日本のJリーグにおいては、「和をもって貴し」という考え方が重視されて、それほどボスマン移籍が増えているようには感じませんね。(統計データとか持ってる方いましたら教えてください!)
まとめ
ボスマン移籍が理解できると、移籍期間のニュースを面白く眺めることができると思います。
「この選手は契約残り1年だからな」なんて考えながら移籍動向を見守ると発見があるかもしれませんよ!
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