いまさら『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を推奨したい

タイトルで毛嫌いして見ていなかった、『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』を視聴し、思いのほか気に入ったので紹介します。

本作は2018秋期にオンエアされていたアニメ作品で、翌2019年6月には劇場版も公開されました。「タイトルで食わず嫌いせずに、とりあえず1話だけ騙されたと思って見てみな!」というアニメです。

本記事はネタバレがあります。気になる方は作品本編をチェックしてから再度アクセスしてくださいネ!

作品概要

タイトル名が長いため、ここからは略称の「青ブタを使用します。

配信情報

※以下は2020年6月9日時点の情報です。最新情報は各リンク先サイトにてご確認ください

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●その他配信サイト情報

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原作情報

原作はライトノベル作品『青春ブタ野郎シリーズ』です。電撃文庫にて2014年から刊行されており、現在10巻まで発売されています。ちなみにTVアニメ放映分が1~6巻の序盤劇場版が6巻の中盤~7巻に相当します。

青ブタはSF&推理要素が微量に含まれる作品ですので、「正確に考察したい!」って人は原作小説から入ってもいいかもしれません。

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著者は鴨志田一先生。炎上アニメとして有名な『さくら荘のペットな彼女』の原作小説を書かれたり、『機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ』で脚本や設定考証を担当されていた方です。
※炎上と鴨志田先生は無関係です

作品ジャンル

タイトル通り「青春恋愛モノ」ではありますが、微量の「SF風味」も含まれています。

語弊を恐れずに言えば、涼宮ハルヒの憂鬱っぽい世界観やギミック」を使用して、「物語シリーズのストーリーライン」を実践したような作品です。

物語シリーズの「怪異」という存在が「思春期特有の悩み+SF要素」に置き換わっており、ヤレヤレ系だけど、困っている人を放っておけない主人公がそれを解決していくストーリーです。

話の重さ自体はまずまずですが、作品タイトルや表紙から来る印象と比べると、「重い作品」と言えるでしょう。人の生死であったり、人格や記憶が入れ替わるみたいな話もあります。

主要人物と大まかな流れ

視聴済みの人は次に行ってくださっても大丈夫です。詳しく知りたい方は、各項目を展開してチェックしてください。

基本的な流れは、2,3話単位でヒロインが交代する形式で、各ヒロインは後述する思春期症候群を発症しています。主人公の梓川咲太がその思春期症候群の解決に向けて奔走するお話。

本作特有の病気で、精神的な悩みを抱えた思春期の少年少女が主に罹患する。作中の"世間"においては、ネットで流行っているオカルト情報の一種として扱われている。
思春期の悩みによる精神ストレスが過剰になると発症し、「自分が他者から認識されなくなる」とか「タイムループ(時間の巻き戻り)発生」とか「ドッペルゲンガー出現」といった症状があらわれる。

・梓川咲太(あずさがわ・さくた)/CV石川界人
神奈川県藤沢にある架空の高校、峰ヶ原高校2年生。中学の時に暴力事件を起こしたという噂があり、学校内では孤立傾向にある。いざと言う時の行動力や決断力は素晴らしく、後述のヒロイン達の悩みを解決していく。
鈍感難聴系ではなく、相手の機微を読み取り、ギリギリのセクハラセリフであったり、タイミングを狙って「好きだ」と言える男

・桜島麻衣(さくらじま・まい)/CV瀬戸麻沙美
青ブタのメインヒロインであり、1~3話のヒロイン。芸能活動休止中の元天才子役で、峰ヶ原高校3年生。自分の姿や声が周囲の人に認識されなくなり、周囲の人の記憶からも自分の存在が消えていくという思春期症候群を発症している。
自分が認識されているか試そうと、バニーガールのコスプレをして徘徊していた際、図書館で咲太に見つかるところから本編がスタートする。1~3話で咲太に助けられたことをキッカケに、彼と交際がスタートする。

・梓川かえで(あずさがわ・かえで)/CV久保ユリカ
咲太の妹。11~13話ヒロイン。過去にSNSイジメに遭った経験から引き籠っており、家の外に出ようとすると体中に痣ができる思春期症候群に悩まされている。

・双葉理央(ふたば・りお)/CV種﨑敦美
7,8話ヒロイン。峰ヶ原高校2年生でリケジョ。咲太が思春期症候群のトラブルに関して相談できる数少ない友人であり、効果的なアドバイスを提供している。自己嫌悪から思春期症候群になり、ドッペルゲンガーが出現してしまう。咲太を「ブタ野郎」と命名した本人。後述する国見に惚れている。

・古賀朋絵(こが・ともえ)/CV東山奈央
4~6話ヒロイン
。峰ヶ原高校1年生。友達の好きな男子から告白されるという未来を極度に恐怖し、回避しようとするあまり思春期症候群を発症。タイムループを引き起こす

・豊浜のどか(とよはま・のどか)/CV内田真礼
9,10話ヒロイン
。麻衣の腹違いの妹。アイドルをやっているが、姉の麻衣に嫉妬するあまり思春期症候群を発症。麻衣と体が入れ替わってしまう

・牧之原翔子(まきのはら・しょうこ)/CV水瀬いのり
劇場版ヒロイン
。咲太の初恋の相手で、地上波アニメ本編開始前に彼の人生観を変えた人物。本編中盤では若返った中学生の姿で現れる。

・国見佑真(くにみ ゆうま)/CV内田雄馬
峰ヶ原高校2年生。咲太と理央と3人で友人グループを形成している。友達想いのイイ奴で、思春期症候群には直接的に関わらないポジション。

感想・総評など

主人公の咲太がイイ奴

「麻衣が可愛くて…、あと理央もね…」って語るのが普通なのかもしれませんが、結局のところこの作品を愛すべきものとして成り立たせているのは主人公の咲太が好印象だからだと思います。

躊躇なく、ヒロインの欲する行動がとれる

「この主人公好きだな」と思ったのが強く感じたのは2話でした。存在がどんどん他者から認識されなくなる麻衣に付き合いながら、「遠くの街でならどうか試してみよう」と東海道線に乗って岐阜の大垣まで移動するシーン。

咲太と麻衣 ©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

不安から、「私のこと見えている? 覚えている?」と聞いてくる麻衣に、見えている、覚えていると答えつつ、麻衣の手を咲太が握りに行くところです。

麻衣「私、握っていいなんて言ってない」
咲太「僕は握りたい(即答)」
麻衣「仕方ないわね…。今だけ特別よ」

麻衣は自分の存在が消えるのではないかと不安で、誰かとの繋がりが欲しい状況。でも、強がりな性格が災いして「怖い・助けて」とは言いにくい。そういった心理を理解した咲太が「僕が手を握りたいから握るのだ」という体裁を作って突破したんです。

心理的に困って袋小路に陥っているヒロインズに対して、恥ずかしがらずに効果的な一打をぶっ放せるところに漢気を感じます。咲太はこういう女たらし行動がテンコ盛りなので、「そりゃ、惚れるわ」と納得できるのがいいですね。

麻衣に一途なのもよい

魅力あるヒロインが次々と出てくるわけですが、咲太が麻衣一筋なのも好感が持てます

色々危ない橋は渡りますし、他の女の子の問題解決に労力を割きすぎて嫉妬を呼び、麻衣からお仕置きされることもあります。

ただ、結局彼の中での本命は麻衣以外にありません。そこが安定しているため、思春期症候群の悩み解決に(視聴者が)集中できるというメリットもありますね。

6話でタイムループを繰り返し、咲太に好かれるルートを模索する古賀朋絵に「1億回やっても変わらない。僕が好きなのは麻衣さんだ」とハッキリ言い切るのは格好よかった。

タイムループの元凶 古賀朋絵 ©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

キャスト陣に穴が無い

この作品、キャスト陣に穴が無いんですよね。全キャラの声に「しっくりする」感じです。水瀬いのりさんの演じたキャラが突出して人気化しないというのが、何よりもの証拠ですね。全く論理的ではないが、アニ豚・声豚の皆様にはきっとご納得いただけると思う)

とくに良いなぁと感じたのは、双葉理央役(CV種﨑敦美)ですね。理央は概ね「無感情理系女子キャラ」にジャンル分けされるキャラですが、たまに恥じらったり、悩んで泣いたりするシーンがあります。そんなシーンでの種﨑さんの演じ分けがものすごく自然で、愛らしいキャラになっています。

具体的に挙げるなら5話です。科学室で理央と国見が話している時、咲太がやって来て扉を開けるも、2人に気付いて「悪い邪魔した」と扉を閉める。直後、国見に惚れていることをを知られたくない理央が焦り、ダッシュで扉を開けて咲太の胸倉をつかみ「梓川はバカか、バカなのか!?」と言うところです。

双葉理央 ©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project

甘酸っぱい焦燥感が滲み出ていて非常に可愛い。その直後、国見が立ち去るといつもの落ち着きモードにサッと戻るのもGoodです。

話は横道にそれますが、種崎敦美さんは『ダイの大冒険』リメイク版のダイ役に決定したそうです。こういう演技力の高い人ですから納得ですね。カッコイイ少年声に期待しています。

SFは"風味"として楽しむべし

原作を読んでいないため、いくらか推測が混じっていまいますが、本作のSF設定は強固で深いものではありません

問題となる思春期症候群については、孤独感や自己嫌悪・自己否定感が強まると発症し、それらの感情が概ね解決されると症状が治まるというのは見ていて分かります。

ただ、その症候群自体に関して、詳しいメカニズムが解説されるワケではありません。咲太と理央によって、「こういうメカニズムではないか?」という想定が提示される程度です。この辺りが不満な人はいるでしょうね。

量子力学だとか宇宙ひも理論とか、観測とか実体化とか、色々とキーワードは出てきますが、あまり詳細にはこだわらず、「SFは味付け」程度の認識で楽しむのがオススメです。

ちょっと不安定な作画

不満点は作画が若干安定な点ですね。「崩壊」というレベルではありませんが、「何か顔のパーツ寄ってない?」っていうシーンはいくつかありました。

まぁ、テレビ放映版は「致し方あるまい…」と言えなくもないです。ただ、劇場版まで粗いところがあるのはよろしく無いですね。

テレビ版の色々なギミックを総動員して、牧之原翔子の思春期症候群を解決していくという話なのですが、動きの粗いシーンが熱中度を下げている感が否めません。

とは言え、ストーリー自体は秀逸な劇場版ですから、見て損は無いです!

評価まとめ!

映像の美しさ★★★背景描写は綺麗だった
人の動きは粗い面アリ
音楽★★★★OP「君のせい」が個人的にはスルメ曲
ED「不可思議のカルテ」も雰囲気あってイイ
ストーリー展開★★★★思春期の悩みを丁寧に描けている
テンポもGood
キャラクター★★★★咲太と麻衣を中心に好感の持てるキャラ多し
オススメする?オススメとりあえず1話だけでも見てみるべし

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ハルヒや物語シリーズが好きな人には、割とスムーズに受け入れられるアニメだと思います。タイトルで毛嫌いせずに、1話だけでも見てみると良いでしょう。

もし作画が美しかったならば、商業面で上記2作にもう少し迫れたんじゃないかなぁ…、なんて感じてしまう勿体ないアニメでもあります。「なり損ね」というヤツですね。

※本記事は2020年6月9日時点の情報に基づいて作成しております。最新情報はリンク先の各サイトにてご確認ください

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